※作者は国語の成績低いです。期待するな ※順番的には使い方→メモとクレジットの順番です ※恐らく誤字脱字あるんでどうかご指摘を ※これ本名だけ聞いても誰かわからんな ====================================== 【MEMORY OF PREVIOUS LIFE】 第三節 - 椎野慶一 ====================================== 自分の顔が本心から嫌いだという人はこの世に何人いるのだろうか。 もしかしたら全人類がそうなのかもしれないし、もしくはそう思ってる人は案外少ないのかもしれない。 どっちにしろ他人の本心なんて知る由もないから知ったこっちゃないんだが。 だが、そんな人間は少なくともここに一人いる。 俺は俺の顔が嫌いだ。 顔の皮膚のほとんどが常に焼けただれているような、俺の顔が。 親曰く、俺が2歳の時に観光旅行に行った時に泊まった宿で火事に巻き込まれた時に治癒ができないほど深い火傷を負ってこんなことになっているらしい。 自宅とかではなく楽しみに行った先での出来事というのがなんとも不幸だな、とは思う。 俺は別にいじめられていたわけではない。 机に落書きとか、所持品を隠されたりとか...そういうことはなかったさ。 ただ...クラスで他の皆からずっと少し距離を置かれていた。 俺なりに頑張ったつもりだったんだけどな。 結果的に他の奴らからどう思われてたのかは知らずに終わったが...俺はみんなと馴染めるように努力したつもりだった。 自分から積極的に動いたり、困ってるやつがいたら手助けしたり、なるべく明るく振舞ったり。 いや...馴染むっていうのは努力とかそういうもんじゃねえのかもしれないけどよ。 それでも俺はバカみたいな話とかをクラスメイトと話したりとかしてみたかったんだ...普通の学生みたいに。 でもいっつも俺が話しかけると俺の顔を見て、少し顔をしかめたり怯えた感じを出すんだ...クラスのあいつら、いや...俺の周りの人間は。 何度心のこもっていない、ぎこちない「ありがとう」や「おはよう」を聞いただろうか。 そういう扱いを受けた原因が全部俺の顔のせいだったのかはわからない。 もしかしたら何か他にも俺に非があったのかもしれないし、俺の周りの奴らが奇跡的に俺が苦手なタイプだったりしただけなのかもしれない。 ただ、そういう扱いの原因の大半が俺の顔のせいであることは他の奴らの反応を見ていれば簡単に理解できた。 もっと普通に接してほしかった...完全にとは言わなくてもいいから、普通のクラスメイトみたいに。 ただ....別に俺の周りの奴らは悪意で俺にあんな対応をしてたんじゃないだろうな、とは思う。 お前が言うなよって思われるかもしれないが...顔面ほとんど焼け爛れてるような奴がいたら俺だってよっぽど気があったりでもしない限り積極的にかかわろうとは思わねえ気がするから。 でも、もしもそうだとして...俺がそうするのは多分そいつが嫌いだからじゃない...きっと"そいつがその顔だから"だからなんだ。 何言ってんだろうな、俺。 俺がもしあいつらの立場だったら、絶対にそうしないだろうに...俺みたいな奴に分け隔てなく接してくれなんて傲慢が過ぎんだろ...俺。 そんな風な、なんとも青春とは呼び難いような高校生活を終えて大学に入って。 最初は怖かった...ここの奴らはどうなんだろう...俺のことをどう思うんだろう、感じるんだろうって。 だが、そんな不安が案外吹き飛ぶほどに...大学の奴らは俺に対して積極的に接してくれた。 _椎野君だっけ?私は千尋、飴川千尋! _大学ってなんか不安だけどワクワクするよね...これからよろしく! そうやって大学で初めて笑顔で声を掛けられた時、俺は思わず涙が出そうになった。 その後も俺に進んで話しかけてきてくれる奴はたくさんいて...初めて自分の人生が鮮やかになった気がした。 なんでそんな顔なんだとか入学当初は聞かれたり、その後も友人との軽いノリでちょっと火傷をおちょくられたりとかをされたときもたまにはあったが...俺はそこまで不快に感じなかった。 それ以上に嬉しかったんだ...一切顔をしかめたり怖がらずに俺と話してくれることが。 それに火傷をおちょくられたりしたときは俺もそいつに言い返して互いに笑いあったりとかしてたしな。 なんだ...別にそこまで重く考えなくてもよかったんじゃないか、だって今はこんなに楽しいんだから。 今まで楽しめなかった分の人生...今から思う存分楽しんでやろう。 そう思ってたんだけどな。 入学してから割とすぐ...白血病っつー病気にかかった。 最初は本気で怖かった。 このままタヒんじまうんじゃねえか、って...本気で不安だった。 だからこそ...医者から5年生存率が約80~90%、適切な治療さえ受ければ1~2年で復帰できるって聞いたときは安心した。 大学生活を半分ぐらい持ってかれるのはしんどかったが...大学の奴らはよくお見舞いに来てくれたし、何よりもせっかく楽しいと思えるようになってきた人生をまだ終わらせずに済みそうなのが本心からの喜びだった。 そんで、入院から大体1年半ぐらい経ったころ...体調も大分回復に向かって本格的に復帰できそうだってなったころに飴川がお見舞いに来てくれた。 飴川はよくお見舞いに来てくれて...本当に人に対して優しい奴だと思った。 _体調、どう? _順調に回復してるの?良かった... _そういえばね、今日は大学で松原がね... _ん?将来どうするのとか考えてるのかって? _私、イラストレーターを目指すことにしたんだ... _え?応援してる? _ありがとう!私、頑張るよ!だから慶一も早く退院してね! _じゃあね!また来るよ! 飴川に限らず、いつもお見舞いに来てくれる奴らは俺の支えになってくれた。 ああ...病気なんかのせいで学校にいけねえのが悔しいな。 早く退院してまたあいつらと話したいな。 それが飴川と話す最後の会話だとは思わずに、俺はそんなことを考えていた。 俺の体調は突然と言っていいほどに急激に悪化した。 医者が深刻そうな顔で理由とか現状を説明してた気がするが、俺は気が動転しすぎていてほとんど脳みそに入ってこなかったせいでなんで"今"俺がこうなってんのかもよくわかってない。 俺は"今"集中治療室って所にいて...かなり危ない状態らしい。 ああ、ゴミだ...なんでよりにもよって今なんだよ。 大学入って、心から楽しめることが増えて...人生に希望を持てて。 なのにこうなんのかよ。 結果的にこうなっちまうなら....最初っから希望なんか持たせないでくれよ。 ふと、最後に空を見たのはいつだろうと思った。 この集中治療室に移動した前の日、俺が最後に外の景色を見た日...窓から見えたのは雨でも太陽でもなかった。 曇天。 雨も降らず...かといって隙間から太陽光が漏れ出ているわけでもない。 綺麗な曇天だった。 横にある心電図の音がまるで泥に浸かったかのように遅くなっていく。 それと同時に、体の感触は沼に沈んでいくみたいに段々と気持ち悪くなっていって。 ああ...なんで俺は今、自分の命が危ういってときなのに...昔のことなんて考えてんだろう。 走馬灯って奴なのかな。 【メモとクレジットに続く】
【↓使い方の続きです】 なんで生きてんだ、俺。 一瞬、病気が回復して目が覚めた、なんてのも考えたが状況から見てどうやら違うらしいことも分かった。 ただ...体が病気の時に比べて軽くて...何故か完全に治っていることはなんとなくわかった。 次に視界に入ってきたのは正面で椅子に座っている人物だった。 男か女かもわからん...そんな雰囲気の不思議な人物で俺を見て微笑み話しかけてきた。 「こんにちは、椎野慶一君...私は神宮寺未来と言う者だ...よろしく。」 俺は状況が理解できなかった。 ただ...そんな状況でもただ一つだけ、わかることがあった。 もう二度とあいつらの元へは帰れないんだと。 ====================================== 「クラウド~。」 そう呼ぶ声で目が覚めた。 どうやら椅子に座って本を読んでいる間に寝落ちしていたらしい。 俺は背後にいるその声の主へと椅子と体を向ける。 「...クロックか。」 「ん。」 ぼや~っとする視界を映す目を擦りながら口を開く。 「まだその姿には少し慣れないな...なんだったか、確かゲームの参加者の体だったよな...?」 「...そうだね、晩醒幸って人の。」 「あぁ...そいつだ。」 机においておいた狐のお面を手に取ろうとして、視線に気づく。 「...何だ?」 「え?」 「『え?』じゃないだろ...俺に何か聞きたそうな顔してるからなんだって思っただけだよ。」 「え...なんでわかるの?」 「...人の表情を読むのは慣れてるからな。」 狐のお面へと伸ばす手を止める。 「んで...何が聞きたいんだよ?」 「...あ...いや、ちょっと失礼かもしれないけど...。」 「...このお面か。」 クロックが図星、ってわかりやすい顔をする。 「...別に、この顔をお前らから隠したいわけじゃない...お前たちが俺の顔を気にしないことは知ってるし...もう隠す必要がないのも知ってる。」 「....? じゃあ...なんで?」 俺は少し俯く。 「俺自身が嫌いなんだ...俺の顔が。」 「...え?」 「どうしようもないのはわかってる、だが...思うんだよ...」 目を閉じる。 「俺は...この顔じゃなかったらもっと真っ当な人生を送れていたんじゃないかって。」 タヒぬ運命は変わらなくても...その過程が今よりもましだったんじゃないかと。 「だから...俺は俺自身に対して顔を見せないためにこの狐のお面をつけているんだ。」 両手で顔を覆う。 「...俺は...今でも辛いんだ、あの昔のことが...この顔のせいで 「暗い!!」 普段はそんなに大きな声を出さないクロックが急にそんな風に声を張り上げるもんだから驚いた。 「は....?」 急にクロックは手を伸ばして俺の顎を持ち上げる。 心なしか、少し怒ったような表情をしているのも読み取れた。 「クラウドがそう思うのを否定はしたくないけどさ...いくらなんでもネガティブすぎない?」 「...どういうことだよ。」 「要するに...もっと自分に自信持とうよってこと...そんな風に自分のことを思ってちゃ今の皆といるのが変に苦しくなるだけでしょ。」 彼女は手を俺から離し、くるりと振り向いて歩いていく。 そしてふと足を止め、口を開いた。 「...クラウドはさ...自分の顔が嫌いだ、なんて言うけれど...。」 クロックはこっちへ少し振り向いて笑いながら言った。 「私は結構好きだよ...クラウドの顔。」 「....お前....」 「そういうこと言うタイプだったか?」 クロックが虚を突かれたような顔をする。 「はぁ~??」 笑いと怒りが混じったような表情をした顔でクロックがこっちに詰め寄り、俺の頬を指でつつく。 割と痛い。 「私なりにクラウドを励ましたつもりなのに...何だいその返事は?ん~?」 「ぅ....す、すまん...。」 「とにかく!自分の顔とかその他諸々にもうちょっと自信持った方が良いよ、本当に...クラウドがしんどいだけだからね。」 「...あ、ああ...わかった...。」 予想外のところから自分のことについて考えさせられたことに驚きもあったが、それと同時にこれほどまでに真剣に自分について考えてくれたクロックに対する感謝と嬉しさがあった。 確かに俺は俺自身のことについては恵まれなかったのかもしれない...顔とかそういう話だけじゃなく、自分に自信を持てないようなこういう性格とか全部ひっくるめての話だ。 でも... それ以上に、俺はいい仲間に恵まれてるな。 心なしか、少し口元が緩んだ。 ====================================== forward No.5 クラウド・ノイズ 前世では「椎野 慶一」という名前であり、また人間の他者に対する複雑な感情のことについて詳しく、人と人との関係という物を理解する上で優秀。 よって、forwardが掲げている目標に必要なメンバーと判断して抜粋。 【第三節 - 椎野慶一 終】 ======================================