僕は覚えてない。 君に会う前の僕を覚えてない。 なんでだろうか。 でも、思い出したらそれはそれで辛い気がする。 だから思い出さないように… 君で記憶をひとひらずつ埋めていく。 僕の覚えていないこと、覚えているけど覆われていること。 全部全部君に塗り替えていけばいい。 そうすれば、君が失われない限り僕は思い出さなくて済むんだよ。 …そう、だよね。 君はまだ生きてるよね? もう一度、僕をその冷たくて優しい腕で抱きしめてくれるよね? まだ僕は思い出すには儚すぎる。 …。