「・・・」 俺は上着を羽織る。 そして布を耳にかぶせる。 そのまま、腰にベルトを回し、刀を二つともつけたら完成だ。 一周くるりと回ってみる。 髪とマフラーがたなびくと同時に、バランスを崩す。 壁に背中を打ち付ける。 2年間ずっと動かずにいた俺の体は、すでに衰え骨が浮き出ていた。 服の間から古傷が垣間見える。 そして、鞄を背負う。 パサリとノートが落ちる。 忘れるところだった。 そして、思い出したように髪をとき始める。 相変わらずのボサボサの寝癖で、流石に外には出たくない。 そう思い、くしを咥え、髪ゴムを手に取り結ぶ。 頭を左右に振っても、一向に落ちる気配がしないので、大丈夫だと思った。 一応走っても大丈夫なように準備運動だけはしておく。 長らく動いていなかった体が悲鳴をあげている。 ただ、そんなことを気にする余裕もなく、俺は家を出た。 〜数時間後〜 久しぶりに東京の風景を見た。 変わっていないと言ったら嘘になるが、見覚えがあるビル群が並んでいる。 「・・・パリッ」 俺はチョコレートを頬張る。 今日の中で48枚目だ。 どうして糖尿病にならないのか俺も不思議だ。 そして、森に足を踏み入れる。 郊外と都内の境目ぐらいなので、この辺にはビル群と森が共存している。 森の奥深くにいくにつれ、足が動かなくなってくる。 あの時もそうだったな。 日がくれかけながらも、爆撃を起こしながら上がった山。 そして目の前で黒くなった墓。 誰に会いたいと願ったかも忘れていた。 そして俺は辿り着く。 蔦が這いながらも、きちんとした手入れがされていて、庭もあり、そして何よりも・・・ 「ただいま。」 そう言いながら、それに近づく。 そのまま、それの手を取る。 それは・・・石像へと化した柊の姿だった。
まぁ誰かわかるよね。 どの世界線か当ててみなされ。