〜レオン視点〜 画面に走る砂嵐に、流れるノイズ。 僕たちは身構えたまま止まっていた。 なぜなら・・・ノイズの中に・・・掠れそうな紫風さんの声が聞こえたからだ。 足音だけで消されてしまいそうな声だが、しっかりとした覚悟を感じる。 『あ・・・・あ、聞こえ・・・これ・・・とは・・・んだんだ・・?』 わけがわからない。 なぜ・・・?どうして・・・? そんな疑問が渦を巻く。 「・・・」 比較的耳のいいアンが聞き取ってくれたらしく、翻訳を始めていく。 「あ〜あ〜聞こえるか?これを聞いてるってことは俺は死んだんだな。って言ってるね。」 そう言いながらどんどんと聞いていく。 「結論から言って仕舞えば、三つお願いされたわ。一つ目、弟の柊のことよろしくーって頼まれたのと、二つ目、超越とリミッター、apocalypseが誰に譲渡されたのか。そして、三つ目がうまく聞き取れなかったんだよね・・・。」 「1番大事なところ聞き逃してどうすんのさ・・・」 そうやって愚痴をこぼしてみるが、柊くんについては問題ないと思うのと、超越とリミッター、そしてapocalypseとかいう能力については何もわからないということ。 ・・・パルサーなら・・・わかるかな。 今は精神状態が安定しているらしく、話そうとすれば話せるらしい。 そう思いながら、部屋を後にした。 〜パルサーのところへ〜 「パルサーさん、大丈夫そう?」 「んまぁミーは親友がいなくなったなら親友の分まで生きる性分だからね★」 いつも通り笑ってくれる。 紫風さんが求めてたのは、こういう人とか、ユーモアがある人と一緒に笑える人が増えることだったのかな・・・と。 「で、何か聞きにきたのかい★」 「あ、そうなんだけど・・・」 「紫風のやつのことかい?ヤツの能力の行方なら知ってるzo」 「ほんと!?」 「ミーが嘘をつくことなんてない!」 そう言いながら多分精神状態はいいとしても、最近食事をとってないからだで意気揚々と動き出した。 〜数時間後〜 「いやぁー、ハイキングはいいねぇ!」 そう言いながら手の上にマグネターをのせ遊んでいる。 あれってそうやって使うもんだっけ・・・? そう思いながら、進んでいく。 「このもうちょっと先にヤツはいるはずだぜ!」 突然、目の前がひらけて、一人の人間・・・ではないような何かが立っていた。 紫風さんと似ても似つかないような無理矢理の真っ白い髪の毛、携えた、玩具のような銀紙を貼り付けただけの刀を携え、明らかに格好つけてるようにしか見えない男が立っていた。 「なんだ?」 そうやって振り返ってくる。 振り返り方が紫風さんとは全然違い、小馬鹿にしたような感じがして、少しずつ腹が立ってくる。 紫風さんを侮辱された気分だ。 そう思い、背中に積んでいた瓦礫を軽く放り投げる。 少しだけ反応が遅れ、刀を抜くも、簡単に刀が折れる。 紫風さんの刀はこんなことじゃ折れるはずもなく、また腹が立つ。 「なっ!世界最強の俺の刀が折れるだと!?」 「世界最強はミーの刀だよ!紫電っていうんだぜ★」 「余計なこと言わなくていいから()」 僕はまた瓦礫をぶつける。 いくつも、いくつもぶつける。 その度に男が傷ついていく。 「ゴフッ・・・あ、や、やめ・・・」 「うっさい。」 そう言って、特大の瓦礫を頭、しかも後頭部にぶつけてやった。 盛大な血飛沫をあげながら、床に突っ伏した。 「パルサー、早く回収。」 「いやぁ、チミは怖いねぇ!」 そう言いながら、全能力を回収したらしい。 「もう殺して大丈夫だよぉ!」 そう言われた瞬間、僕は石を投げつけて殺した。 相変わらず汚い血を撒き散らして死んでいった。 「・・・紫風さんの方がよっぽど綺麗だったのに・・・」 そう呟くと、パルサーも聞いていたのか、 「そうだねぇ!紫風のやつは髪の毛が赤いからより一層血が綺麗に見えたねぇ!」 「で、回収終わったので帰りましょう。国際連合の代わりに立ち上がるやつだって少なくないです。むしろそれが半分以上かと思うので、多分、いや、きっと、いや、絶対いつ攻められてもおかしくないです。」 「結局どこなんだよぉ!」 そう言いながら本部へと帰った。 〜本部〜 回収は成功し、一応能力保管瓶に詰めてあるけど、いつ出て行くか分からない。その間に、紫風さんと同等程度の器を見つけないといけない。 紫風さんは・・・ちょっと彼女さんから聞くに寂しがり屋で弱虫、けど優しい人だって言ってたから、それにこっちのイメージ、メンタル豆腐を掛け合わせたような人を見つけ出さなければいけない。 しかも、いろんな種の生物が混ざったものでないといけない。 そこまでの条件が出てくると、改めて希少種だったことを思い知らされる。 「うーん・・・・・・・・・」 アンも相当唸っている。 パルサーは寮に戻り、マグネターでお手玉をしているのは確認済みだ。 ちなみに柊さんははやで寝込んでいる。はや5日目だ。 能力瓶は完璧ではない。 栓を閉め忘れたり、しっかりと閉めていないと、そこから莫大な能力のエネルギー波が漏れ出てくる可能性だってある。 それに、能力自体のエネルギー波がとんでもない圧力で瓶を割る可能性だってある。タイムリミットはせいぜい32時間と言ったところだろう。 三つ目を探し当てることと、紫風さんの能力の器を探して、その人にNEXUSに強制して入らせる。 その後、四天王の埋め合わせをしてもらう。 紫風さんがこの後何百、何千、何万年後に転生してきたとしても、超越が、リミッターが、apocalypseがきちんと使えるように。 そう思いながら、パソコンをいじっていると、廻が抱きついてくる。 多分頭を使いすぎたのだろう。 熱がある時以上に頭が熱い。 オーバーヒートしてしまったようだ。 だが、もっと大変なことは、廻が抱きついた衝撃で、マウスをカチリと押してしまったことだ。 だが・・・それは・・・闇市場に売っている・・・正規版の・・・能力瓶だった。 「アン!財布借りるよ!」 そう言って、机の上に置いてあった財布を勝手に取る。 「え、ちょ、先輩!?」 そのまま、クレジットカードを引きずり出し、安全、絶対安全なところに、クレジットカードの番号を入力する。 そして、800万もする能力瓶の正規版を買う。 三つもだ。 なんなら紫風さんのクレジットカードでも良かったけど、ATM凍結されてるだろうしやめておく。 変にバグらせたくない。 そう思いながら、商品を買う。 「ちょ、先輩・・・?」 「これ多分いける!」 そう言いながら、品が届くのを数時間待った。 〜数時間後〜 ピンポーン 『郵便でーす。』 いくら世界を敵に回したとしても、それはもう終わった話である。 だから郵便は届く。 そう思いながら、商品を受け取り、開けてみると、3個しか頼まなかったはずが、12個もあった。 「え・・・?」 「やっぱ騙されたんじゃ・・・」 「あ、私が予備用に追加しときました。」 ヨルさんがしれっという。 用意周到な人だ。 そう思いながら、紫風さんの能力を瓶に詰め込む。 その時だった。 バン! 「はぁ・・・はぁ・・・」 闇くんがドアを乱暴に開けて入ってきたのだ。 「ど、どうかした?」 「・・・」 息が切れすぎているのか、紙に書いて渡してきた。 内容は・・・ 「え・・・?」 『赤坂紫風らしき人物の影を発見。追ってみたところ、山の中に入り、とある湖の前で、見失った。』 と書いてあった・・・。 「それって・・・」 「生きているわけじゃないですよね・・・あって亡霊とか・・・。」 闇くんがフルフルと首を振る。 明らかに木を避けて歩いていて、湖に触れたら、しっかりとぽちゃりという小さな音がしたらしい。 ・・・ということは・・・ 人違いか・・・それとも・・・紫風さんが生死の概念を放り出したか。 それぐらいしか思いつかない。 何気なく、資料室にこもってみた。 そして、なんとなく棚に目を向けると・・・あったのだ。 『それ』が。 死者ノ書・・・が。 〜続く〜
ep.1 https://scratch.mit.edu/projects/907117102 ep.3 https://scratch.mit.edu/projects/907912514 次回:死者ノ書