努力が足りない看守たちが、泉谷Aが牢屋に新しい鉄を作ったことに気づいたのは、21時18分のことだ。 もう手遅れだ。 19:45分からの自由休憩で、いつものように睡眠時間10分の泉谷Aが、ふらふらと高橋巧のところにやってきた。5分間で知り合いになったのだ。高橋巧は、OK、と言った。そして、共同の穴を掘り始めた。 と、その時、泉谷A鉄の背面にある方の一本を、できるだけ静かにもぎ取った。それでも、少しゴォ、と重低音が響く。 知り合いになれた理由は、高橋も睡眠時間が30分程度だったので、おんなじ気持ちだったのだろう、2人はすぐに意気投合したのだ。 努力が足りない看守たちは、鉄が外から動かせないことに気づいた。泉谷高橋コンビは、鍵穴を作ったのだが、その鍵がいくら探しても見つからない。なるほどふたりは、まだ鉄の間が広い時入って、そこから自分らを閉じ込めたのだろう。 穴を掘り進めていく。地震が起きた。逃亡者の起震〜刑務所地震〜だ。 とある看守は「ヒエ〜」と言った。 「ヒェー」と別の看守の声。「やはり祟りだ。来たのか、ついに」 泉谷Aがポカンとしている。高橋もポカンとしている。が、それもしばらくの間だった。間も無くそのわけがわかった。 それは、とある看守の一言だった。 「阪村は同姓同名だった」 それでもまだ、泉谷Aはポカンとしている。が、高橋は思い当たるものがあった。 「2009年、武橋望が逮捕された。ま、それもペンネームらしいんだけどな…武橋は、有名な事件の黒幕だったらしいんだ」 高橋は、淡々と語っている。その顔を、泉谷Aが淡々と高橋に顔を向け、高橋は、やはり泉谷Aを見ている。 「証拠は、LINEだ。『サカちゃ〜ん』って書いてあったんだ」 泉谷Aにもその話が大体わかってきた。 「なるほど、その送り主が本物だったって言うわけか」 高橋は、いや違うんだ、と言った。 「なんと本物は、あの武橋と偶然すれ違った時、スマホをスったんだ」 泉谷Aは、呆れて口を開けている。高橋は苦笑いをしながら、「上等だよ」と言った。 「つまり、武橋は冤罪だったんだなぁ…」 感慨深そうに、泉谷Aが言った。夜の中でも風が涼しい時間帯になっていた。 「行くぞ」 「おう」 地下の土管を掘り進めて、土埃や石を後ろにやる。間抜け看守たちは、やはり鉄が抜けない。もっとも、最前面の鉄は、牢獄の入口の鉄だったのだ。
SEASON2(6~15話)のあらすじ 泉谷智は、脱獄を計画する。もちろん仲間が必要だ。幸いなことに、牢獄の中には不満を持つものがたくさんいた。ここは「冤罪牢獄」だったのだ。 一方、少年SOとヒコは一旦泉谷大輔と「冤罪牢獄」のちょうど間のサービスエリアで寝た。 少年SOに薄暗い空が見える窓から太陽の一筋の光が当たった。少年SOが起きると…!? 語り手…ノーマーク 泉谷智…泉谷A 泉谷康二…泉谷B 泉谷みゆき…泉谷姉(AB) 泉谷ひろな…泉谷母(C) 泉谷大輔…泉谷兄(D) ソウ青年…少年SO 廣田看守…廣田看守 謎の牢屋の長…謎長 弘中博彦…ヒコ 高橋巧…高橋巧(たかはし たくみ) 新キャラ!