3日目。 朝。 目覚まし時計がないから何時何分か分からねえ。 ところであいつらは兄さんの家に着いたかな。 泉谷Aはそんなことを思った。涙が込み上げてきた。 そういやこんな時ドラマだったらどうだろう。ピンとくるものがあった。 高速をゆく三台の車の話に戻ろう。 残り十九キロ。残り少し。ドライブを楽しもうじゃないか! ヒコとラインを取る泉谷AB。 心配げな泉谷の両親。 泉谷の両親はこれまでないくらい心配している。なんてったって「こんなこと」初めてだ。 流している曲は「15の夜」 リクエストしたのは泉谷Cだ。 泉谷ABは微笑しながら「バイク盗んだ冤罪かな?」と言った。「それとも煙草?」 泉谷Bは、「どちみち家(を)出(た)最中でのことだから俺らは見てねえんだぜ?」頭狂ってんのか、と言いかけて口を塞いだ。みんなが泉谷Bをガン見していた。今は青信号だ。泉谷Bは泉谷Cの肩を叩いた。 ヒコから返信が来た。 「今からそっちに向かう」 泉谷Dはというと、結局家に帰っていた。 泉谷ABのファインプレーで、目的地が変わった。残り16キロくらいだった距離が反対方向の64キロ。宇都宮から幸手くらいの距離だ。まだ距離がある、ドライブを楽しもうじゃないか。 渋滞に巻き込まれ、2時間後。 巻き込まれなかった兄弟が追い上げ、家に着く頃には集合していた。 「にいさーん」 「はーい」 泉谷Dが出てきた。 テレビを付けた。 ニュースで、泉谷一家が一斉に口に出した言葉と、泉谷Aのピンときたものはおんなじだった。 「偽物(似せ物)の泉谷たいほ」
SEASON1(1~5話)のあらすじ 泉谷智(SATOSI IZUMIYA)が目を覚ますと、牢獄の中だった… 冤罪の中、泉谷智という名の学生は奮闘する。一方、泉谷智を探す泉谷家は、「本物の泉谷」に会って…!? 牢屋の中、泉谷智も、「本物の泉谷」がいることに気付く。相変わらず手がかりが少ない泉谷家は、ニュースで「あるもの」を見て…!? 語り手…ノーマーク 泉谷智…泉谷A 泉谷康二…泉谷B 泉谷みゆき…泉谷姉(AB) 泉谷ひろな…泉谷母(C) 泉谷大輔…泉谷兄(D) ソウ青年…少年SO 廣田看守…廣田看守 謎の牢屋の長…謎長 弘中博彦…ヒコ