前章↓ https://scratch.mit.edu/studios/29586791/ ※一応確認はしましたが、誤字脱字や文章が変になっているところがありましたらすみません...! ※二次創作 「攻撃が・・・通らなかった...?」 カサネがぽつりと呟くと、 「そういうことに、なるのかな・・・」 横でエイトが言葉を返す。 「これって...一体何が起こったの?」 「ロット・・・?今、攻撃...避けてたの?」 アスカがロットに恐る恐る訊く。 「・・・・・・」 ロットは黙ったまま立ちつくしている。 「え、ちょ・・・これってどういうこと?ロット・・・攻撃避けてた?」 カナが驚いた様子で呟く。 「いや・・・攻撃は・・・当たってたと思う」 ホルも何とも言えない表情で呟く。 「じゃ、じゃあ・・・攻撃が消えたってこと...?つまりどういうこと...?」 「俺が訊きたいよ...!!」 「アイタタタ......」 ハチはリスポーン地点に戻されていた。 「フルチャージしてたし・・・直撃してたと思うんだけど......」 ハチも考え始める。 「う~ん...何が起こってるんだろ...」 フルチャージしていたし、攻撃も直撃したはず。 ―――じゃあ考えられるのは? 『おーっと?ここでトラブル発生か―――?』 ヒメの驚いたような声が響く。 『一体何があったのでしょう?』 イイダも困惑した様子だった。 「ちょっと待って、これって・・・試合どころではなくない?」 カサネが焦った様子でそう呟く。 「攻撃当たったはずなのに当たってないとか...なんかよく分からないし...」 カサネがぽつりぽつりと言っていく。 「これって、一旦試合中断した方がいい感じだよね、エイト!」 そう言ってカサネはエイトの方を向く。 「・・・えっ?あ、うん」 エイトが何も聞いていなかったような声を漏らす。 「・・・エイト?大丈夫?なんか顔ぼーっとしてるけど・・・」 「・・・あっ、ごめん、ちょっとめまいがしてき―――っ!!」 言い終わる前に、エイトは倒れそうになる。 「ちょっ、エイト!?どうしたの!?」 カサネが慌ててエイトの体を支えるが、今度は咳をし始めてしまう。 (めまいに、咳・・・この症状、風邪に似てるけど・・・こんな急に具合が悪くなるはずがない・・・!) カサネは急いで考え始める。 (ハチから前に言われたはず・・・急に体調が悪くなったとき、それは...) 「・・・闇が強くなる前の合図...!」 「・・・ん?」 ハチが何かに気づいたかのように声を出す。 「・・・今、何か・・・黒い影が見えたような...」 さりげなくハチはカサネとエイトがいる方を向く。 「・・・何か悪いことが起こっている気がする」 「・・・全く、この間会ったのに久しぶりって・・・」 「そう言った方が自然だろ?」 "リーダー"は、先程まで笑っていた顔を少し怒ったような顔にする。 「ま、そうだけど...で?リーダーは何しに来たの?」 「何しに来たのって・・・お前が呼んだんだろ」 "リーダー"は、はぁ・・・と、呆れたような声を出す。 「あれ~っ?そうだっけ~?覚えてないや~!!」 「お前な・・・」 二人の間に走る火花に割って入ったのは看護師のようなイカ。 「まっ、まぁまぁ、二人とも!会って早々の戦いは置いといて、早くあいつを探さなきゃ!」 「・・・やっぱり、なんか手がかりを持ってきてくれた感じ?」 「当ったりー!さすがシャル!」 看護師のようなイカがグッドサインを向ける。 「実はね―――」 看護師のようなイカが言い終わる前に、焦ったような声が聞こえてくる。 「おい!今―――気配がぐんと大きくなったぞ!」 と、タスキが声を出した瞬間、 「この気配が来る方・・・これって......っ!!」 シャルがかなり慌てた様子で走り出す。 「まって・・・まずい......!気配が来る方向...!これって・・・・・・!!」 「エイト!」 カサネの慌てた声がハチの耳元に届く。 「・・・え?」 「おい、何して―――待っ・・・・・・!」 カサネが言い終わる前に、エイトが観戦席からステージ上に飛び降りてくる。 「・・・エ、エイトくん...?何して・・・」 直後、エイトは飛び降りた場所からミント、アスカ、ロットがいる場所―――、ステージ中央へスーパージャンプをして飛ぶ。 「っ!!エイトくん!!待って!!まだ試合中...!!」 そこで、ハチははっとあることに気づく。 「今...ゲソが黒く染まって・・・」 ―――まさか。 「アスカさん!!ロットさん!!ミントさん!!逃げて!!」 刹那、ハチは人生で一回も出したことがないような大声で叫ぶ。 (さっきの黒い影と同じゲソの色・・・!!あれは・・・!!) 「!!」 ハチの声に気づいたロットは、スーパージャンプの着地地点に瞬時に移動。 「―――っ!!」 そのとき、着地地点にエイトが降りてきて、ロットに向かって蹴りを入れる。 ロットは自身の持っていたブキでなんとか衝撃を受け止めたが、うしろによろめいた。 「ロット!!」 近くにいたアスカが、よろめいたロットをおさえた。 「さ、さっきから何が起こって・・・・・・」 ミントはそう言いながらエイトの方を向く。 「ゲソが・・・黒い・・・」 エイトを見ると、ゲソが黒くなっていた。 「・・・・・・」 「っ!!」 エイトがミントに気づき、今にも襲いかかってきそうな目を向ける。 「エイト・・・どうしたんだよ・・・どうして急に・・・」 ミントがそう言っている間もエイトは襲いかかってきそうだ。 「ミントさん!!」 ミントが声が聞こえた方に顔を向けると、ハチが走ってきていた。 「にっ、逃げてください!!」 「えっ・・・」 唐突にハチから逃げろと言われ、ミントは混乱していた。 だが次の瞬間、エイトはもうミントに襲いかかろうとしていた。 「―――っ!!」 ミントが咄嗟に腕で守ろうとする。 そのときだった。 ダァン!という何かが落ちてきた様な音が鳴った後、エイトに何者かが覆い被さった。 「エイト!」 覆い被さっていた人物は、濁った赤のようなゲソの色をしており、ハチが一度見たことのある人物―――、 「エ、エスノさん!!」 ハチは思わず声を漏らした。 と同時に、遠くから何者かの声が聞こえてくる。 「エスノ!!手!!手だよ!!」 「シャ、シャル!!」 声が聞こえた方を向くと、なんとそこにはこちらへ飛んできているシャルが。 「二人とも、ど、どうしてここに―――」 ハチがエスノ、シャルに問いかける間、エイトはエスノに抵抗していた。 「シャル!ねぇ、一体何が起こってるの!?シャルは知ってるの!?」 シャルはハチがいることにやっと気づいたかのように、 「ハ、ハチ!?」 と驚いている。 シャルは驚きつつも、周りを見渡しながら、 「わたしは気配が大きくなった事しか分からないけど・・・でも・・・なんとなく今まで何があったか分かったよ」 と、なぜか自分に言っているかのような話し方をした。 「えっ・・・それってどういう・・・」 ハチは詳しく訊こうとしたが、エイトがエスノに抵抗している音で言葉はかき消されてしまった。 「とにかく・・・今はエイトがまずいよ」 「そ、そうだね...ど、どうすれば・・・」 ハチがどう行動すればよいか迷っていると、 ドン! と地面を踏みつけたような音が会場に響き渡った。 ハチは一瞬、エイトが逃げたのかと思ったが、 ・・・違った。 いつの間にかエイトの前にはロットがいた。 そして、エイトに向かって攻撃しようとしていた。 「あっ・・・!!」 ロットの攻撃が通ろうとした瞬間、今度はエイトが地面を踏みつけて、宙に浮いていた。 いつの間にか、エイトを抑えていたエスノは、ロットが飛んできた衝撃なのか、少し離れたところに飛ばされていた。 「宙には浮かないでよ!!せめて地上戦でしょーっ!!」 シャルはぐぬぬという顔でエイトに向かって叫ぶ。 「そ、空ならシャルが飛んでいけないの?」 ハチがシャルに訊くが、 「無理だよ、私は飛ぶことができるけど、すごく高いところまで飛べる訳じゃない。それに、人に触れられるとしても、攻撃が通る訳じゃない・・・」 「そんな・・・ならどうすれば・・・」 ハチがそう呟くと、また地面を踏みつけたような音がした。 ハチはすぐに上を見上げる。 「えっ・・・」 ハチは何回も瞬きし、そして何回も目をこすった。 だがそこには、何回見ても、宙に浮いているロットがいた。 ロットは、いつの間にか先程まで試合で使っていたはずのブキを手に取り、エイトの目の前に浮いている。 次の瞬間、エイトがロットに向かって攻撃を入れる。 ロットはとにかく避けながら、隙があればエイトに向かって攻撃を入れる。 それが数秒間の間に、目に追えない速さで繰り返される。 ハチが呆気にとられていると、 「おーい!!みんなーっ!!」 という声が聞こえてくる。 はっとして振り返ると、そこには走ってくるカナとホルが。 「おい、大丈夫かアスカ!」 途中でホルは、ロットが地面を踏みつけた衝撃で倒れていたアスカに走っていく。 「ハ、ハチ!」 「ハチちゃん!!」 すると今度は、走ってくるカナ達とは反対方向から、ミントとカサネが走ってくる。 「み、みんな・・・」 ハチは少し安堵したような顔をしたが、それもつかの間、 「エイトくんとロットさんが・・・」 と、また頭上を見上げる。 空中では、エイトとロットの戦いが続いている。 「だ、大丈夫だよ」 そこへ、ホルに肩をかしてもらいながらアスカが歩いてくる。 「アスカさん・・・っ!?」 ハチは、はっとしてアスカの足元を見る。 アスカは先程の衝撃の影響なのか、少し足に傷がついている。 「あ、アスカっ!!」 驚いたカナがアスカに駆け寄る。 「大丈夫!?動けるの!?」 「大丈夫だよカナちゃん・・・ちょっとびっくりしたけどね・・・あはは・・・」 アスカはそう言いながらも、痛みに耐えていることが分かる。 「ロットっ・・・!!何考えてるか許さないけど、アスカを傷つけたのは許さないからねっ・・・!!」 カナはそう言いながら、空中で戦っているロットに向かって睨む。 それを見てアスカはあ、いや・・・と呟いた後、 「誤解だよカナちゃん・・・その・・・私がいいよって言ったから」 と言った。 「えっ・・・?」 カナがびっくりした声をあげた後、 「えっとね・・・」 とアスカは話し始めた。 「ロットが攻撃を受けた後・・・これからエイトくんを止める為に、ここから地面を蹴って飛んでいきたいけど、それだと私に被害が及んじゃうって言われて・・・私、全然状況が読み込めてなかったけど、エイトくんを止められるなら大丈夫だよって言って・・・まぁそうしたらこうなったんだけど・・・」 「ま、まって・・・分かるような分からないような・・・ っていうかわざわざアスカのいたところから飛んでいく必要ある!?」 カナが少し混乱したような言葉を放つ。 「でも私がOKしたからさ・・・あはは・・・」 「なんでOKしたの~~っ!?」 どうして~っ、とカナは頭を抱える。 「まぁでも・・・アスカの怪我、ロットがそれなりに配慮したのか分からないけど、そこまでひどくないし・・・まぁだからといって放っておいたら悪化するだろうけど・・・」 ホルはそうアスカを見る。 と、そこでカサネがポケットから何かを取り出して、アスカの近くへ歩み寄り、 「アスカさん、これよかったら」 と、何かを手渡した。 「これは・・・?って冷たい!」 アスカの手にあったものは、一見ただのハンカチにしか見えなかったが、どうやら冷たいようだった。 「今日暑いってきいてたので、ハンカチを凍らせてきてたんですよね...アスカさんの怪我、恐らく打撲だと思うので、怪我したところをそれで冷やしてください」 「カサネちゃん...!ありがとう・・・」
アスカはカサネにお礼を言うと、言われた通りすぐに怪我した場所を冷やし始めた。 「とりあえず・・・アスカはそれ以上動かない方がいいよ。打撲なら尚更・・・」 「そうだな・・・無理に動かない方がいいし・・・それでも痛みがひどくなったら言えよ、俺とカナはずっと傍にいるからな」 カナとホルは心配そうにアスカに言った。 「ふ、二人とも・・・ありがとう...!」 アスカがお礼を言うと、カナとホルはにこりと笑った。 そんな中、ドォン!と何かが落ちたような音が響き渡った。 「!!」 ハチはハッとして空中に視線を変えた。 そこにはロットだけが浮いており、エイトは少し遠くの方まで飛ばされていた。 「・・・っ」 ロットは手を強く握り、エイトを追いかける。 「もう何が起こってるか分からないよ・・・」 カサネがそう呟く。 「・・・そうだよね」 シャルが独り言のように言う。すると、 「えっ!?何!?どこから!?」 カサネが急に慌てはじめる。 「・・・さっきから変なことばかり怒ってるけど...その...ハチのそばに浮いてる人って一体...?」 ミントも急に顔色を悪くして、ハチのそばを指差す。 「えっ・・・先輩何のこと...ってうわああああ!?!?」 カサネがミントが指差した方を見て叫ぶ。 「えっ・・・どうしたの二人とも・・・急に・・・」 「どうしたもなにも、その浮いてる人誰!?何!?幽霊!?」 「さっきの声ってまさか・・・」 二人が顔を見合わせる中、シャルがハチに語りかけるように言う。 「あれ?ってことはさっきは私のこと見えてなかったのかな?見えてるもんだと思ってた」 「いや・・・普通の人は幽霊なんて見えないよ・・・」 「えーっ?そう?」 「そうだよ・・・」 シャルはうーんと少し考えたような素振りを見せて、カサネとミントの前へ移動する。 『ひっ!?』 「あーっ、そんなに怖がらないで~!!別に何かしようとしてる訳じゃないから...」 シャルがそう言いつつも、まだ二人は混乱しているようだった。 「・・・そうだなぁ、今は急がないとだし...簡潔に説明するよ」 シャルはそう言って自己紹介を始める。 「私はシャル。幽霊...まぁ幽霊なのかな?私は今、エイト...を抑えるためにここにきた」 「うん...えっとどういうこと...?」 「まぁまぁ、今は状況整理だよね、先にそうしよう」 「えっとまだ君のことよく分かってないんだけど...」 シャルは二人の反応を無視して話し始める。 「まず...来てみて思ったんだけど、最初にロットっていう人が何かをやらかしたのかな?」 「えっと...ハチの攻撃が通らなくて...」 ミントが混乱しつつもそう言う。 「なるほど...まずはバトル中にロットが混乱を招く...と」 「何が起こったのかまだよく分かっていないときに...隣にいたエイトが急に苦しみだして...そしたら会場に飛び降りて...」 「なるほど、大体よく分かったよ」 つまりこういうことだね、とシャルは話し出す。 「バトル中にハプニングが起きて、会場が混乱しているときに、エイトが会場に飛び降りて攻撃を開始...」 そっか...とシャルは呟く。 「それと同時に私達が気配に気づいて...」 「えっ?何?」 ハチがシャルに聞き返す。 「ううん、なんでもないよ、とにかく急がなきゃね。まずはエイトを止めないと」 シャルがそう言った直後、先程ロットによって飛ばされていたエスノがシャルの真後ろに現れる。 うわあっ、とカサネとミントが驚くが、エスノは構わず言う。 「お前...ちゃんと対処方法あるんだよな...?」 「あの二人に任せておけば大丈夫だよー!私は知らない」 「お前な...」 エスノは顔に手をあて、ため息をついたが、 「・・・分かったよ」 と何かを諦めたかのように声をもらし、地面を蹴ってエイトとロットがいるであろう方向へ飛んでいく。 ドオン! 建物が壊れてしまいそうな音が会場中に響き、ハチたちはとっさに耳と目を塞ぐ。 音が鳴ってから少しして、ハチはおそるおそる目をひらく。 「!!」 音がした方向を見ると、恐らくエイトに体当たりする形で動きをとめたエスノが、追ってきていたロットの動きを手で制止している状況だった。 「怪我させてないでしょうね・・・」 シャルがそう呟き、エスノ達の方向へ飛んでいく。 それに続くように、ハチもエイトの元へ走り出す。 「止まった...?」 「さっきから何が起きてるか...全然分からないけど...と、とりあえず、エイトは無事かな!?」 カサネとミントもハチに続いて走りだし、その場に残されたのはアスカとカナ、ホルのみになる。 「エイトくん...大丈夫かな...それにロットも...」 アスカが心配したような声をもらす。 「ロットは...多分大丈夫だけど...エイトくんは様子が変だったみたいだし...無事だといいけど...」 「さっきすごい音したし...怪我してないといいけどな...」 カナとホルも、心配しているようだった。 「・・・あれ?そういえば・・・」 アスカは周りをきょろきょろして、不思議そうな声を出す。 「・・・アスカ?どうしたの?」 カナがそんなアスカに心配したように訊く。 「・・・なんだかさっきから静かだね...」 「えっ?静か?全然静かじゃないけど...?」 「えぇと、なんていうか、その...」 「私達以外の...会場の人達の声が...全く聞こえない...」 「エイトくん!」 ハチはエイトの元に駆け寄り、顔を覗き込む。 「・・・大丈夫、寝ているだけだ」 エスノがそう呟く。 「寝て...?え?」 「怪我をさせないようにして動きを止めるには寝させるしかなかったんだ。怪我はしてないから安心しなよ」 ハチはそう言われて、エイトの顔に耳を近づける。 本当に寝ているだけの様で、エイトは寝息をたてて寝ていた。 「よ、よかった...!」 ハチは安心したのか、その場に崩れ落ちるかのように座り込んだ。 「すっごい大きな音したけど...寝ているだけ、かぁ...よかったぁ...」 カサネもほっと胸をなでおろす。 ミントもその様子を見て安心していた時、 「ロットは...?」 と、辺りを歩いてロットを探す。 「...あ!」 少し離れたところに、ロットが壁に寄りかかるようにして座っていた。 「・・・大丈夫なのか」 その声を聞き、ロットは顔をあげる。 少し戸惑うような様子をみせた後、ロットは大丈夫、とだけ返す。 「・・・エイトは怪我なかったんだ、ロットは?」 ロットはそう言われ、とっさに左腕を右手で隠すようにしてから、大丈夫と返す。 ミントはその様子を見て、ロットの左腕をつかむ。 「・・・あ」 ロットはその行動に動揺したようだったが、しばらくしてから、 「・・・はぁ」 と息をもらした。 「・・・あれ?」 ミントはロットの左腕を診た後、 「・・・怪我してないのか」 と言う。 「だから、大丈夫だって言―――」 ロットが言葉を言い終わる前に、ミントはロットの袖をまくる。 「・・・え?包帯?」 ロットの左腕には真っ白な包帯が巻かれていた。 「・・・包帯常備してるのか?」 「違う・・・」 はぁ、とまたため息をついて、ロットは話し始める。 「これは元々巻かれてるんだよ、お前に会う前から」 「会う、前―――?」 そうだよ、とロットが呟こうとしたとき、急に何かに反応したかのように空を見上げる。 「えっ?何?もしかしてまたエイトが...?」 「違う...」 明らかに先程までとは違うロットの様子にミントは驚くが、すぐにハチ達のいる方向へ顔を向ける。 ハチ達は変わらず、エイトの周りを囲んで、エイトの様子を見ている。 「ロット・・・?」 ミントはロットの方に向き直る。 「おい、どうし―――」 ミントが言い終わる前に、ロットは地面を蹴って空へ飛んでいく。 「ロ、ロット!?おい、お前も休んでなきゃいけな・・・」 「で、どうするんだよ」 エスノがシャルに向かって言葉を発する。 「いや、どうしようも何も・・・気配が来たところはこの辺りなんだけど・・・」 「探してくればいいだろ、気配。少しは残ってるんだろ?」 「それが・・・全く感じとれないくらいに小さくなってて・・・どこから来てるのか分からない」 「何なんだよ・・・」 エスノがはぁ、と呟く。 「とりあえず今はエイトの様子を見て・・・」 エスノはそう言ってエイトの方へ向き直る。 「・・・・・・何だ?あの、エイトの影...?」 エスノは目を見開いて、不思議そうな声を出す。 「え?何が?」 シャルもエイトの方へ向く。 一見、何の変哲もないように見えた。だが、エイトの影だけ、他の者とは違って少しだけ暗く見える。 「何だろう、二人の人の影が重なったみたいに・・・」 シャルがそう呟いた瞬間だった。 エイトの影が、シャルが言ったかのように、まるで "重なっていた影"が重ならなくなってしまったかのように、地面から飛び出した。 「―――――っ・・・!?」 強風が吹き、シャル、エスノ以外の全員がとっさに目を瞑る。 「・・・急に、気配が強くなって―――っ!!」 シャル、エスノが影が飛んでいったであろう方向を向いて硬直する。 「・・・あーあ、やっと出られたのに」 誰かがそう呟く。その一言だけで、その声だけで、まだ顔すら見ていないのに、恐怖と嫌悪が体中に伝わっていく。 「ロット!!」 ミントの焦ったような声がした後、何かがはじかれたような音と、何かが落ちたような音が、続けて鳴った。 「・・・え?」 ハチが瞑っていた目をひらいて、音が鳴った方向を見る。 そこには、倒れたロットとミントがいる。 「あれ、昔とは随分光景が違うんだな。昔は・・・緑が多かったような」 また声がした。 恐怖が増えていく中で、ハチは、恐る恐る声の主の方を向く。 真っ黒に見えて、少し緑がのったような髪と、赤と青が混ざっているような色なのに、紫色ではない毛先。そして、鼻が隠れるまで伸ばされた前髪。 薄い灰色の服、赤みがかった黒色の靴。 「・・・7、K...!」 悲しんでいるような、怒っているような声で、シャルが言葉を放った。 【第二十五話終わり 第二十六話に続く】