前章↓ https://scratch.mit.edu/studios/29586791/ ※今回もチェックしていません 「教官!」 そう言ってハチは飛び起きた。どんな夢を見ていたのか思い出せない。 「―――教官って誰?」 ハチは自分に問いかけたが、答えが分かるはずがない。 「まぁ・・・気にしなくていいか・・・」 部屋の扉を開けると、やはりエイトが料理をしていた。 「おはよ」 「おはよう」 「無理しなくてもいいのに」 「最近調子がいいからさ」 そう言ってエイトは笑う。 「...うん」 ハチは作り笑いをした。 「そういえば最近ずっと夢見てる気がするんだけど、幽霊とかいるのかな?夢見せる霊」 ハチが冗談でそう言った。 「幽霊~?」 エイトが非科学的!と笑う。 「だよね~!」 ハチも冗談で言っていたので、そう返した。 が、その数秒後に、本が棚から一斉に落ちた。 「...ん?ま、まさかね~・・・」 ハチが冷や汗をかきはじめる。 カシャン お皿が動く。 「うわっ!」 エイトの頭にインクがかかっている。 「あははは、面白い」 エイトの後ろにいつの間にか女の子がいる。 手にはパブロがあり、宙に浮いている。 「っていたあああああああああ!?」 ハチが女の子指さしてそう言った。 「あははは、バレちゃった?」 女の子がハチのもとに飛んできた。 「わたし、シャル!見ての通り、幽霊だよ」 「ってことは、ずっとココに住んでたの?」 「住んでないよ、幽霊になる前までは。幽霊になってからは、イカ達の家を日に日にまわってたんだ。で、ココが面白そうだったから、ここ数日はココにいたんだ」 シャルがピースをする。 「幽霊って言っても、インクとかは使えるんだよ、幻みたいな感じだけど」 「へ~...」 まさか本当に幽霊がいるとは思わなかった。 「ってことは、最近ずっと夢が見えるのはあなたのせい?」 シャルはう~んと考え込んだが、やがて、ううん、と言った。 「それはわたしの力じゃないよ。君が見てるだけ」 シャルはそう言った後、 「あ、あと、しばらくここにいようかな~」 と言った。 「エッ」 エイトがむせそうになった。 「駄目っていうなら毎晩脅かしにくるぞ~~うひひひひ~!」 シャルが不敵な笑いをして姿を消した。 「マジかよ・・・本当に幽霊っているのかよ・・・」 エイトが何かブツブツ言いながら料理を再開した。 その頃ミントは久しぶりにタコツボバレーにいた。 「・・・司令」 ミントが呟いた。 「ヒロって何者だったんだ?」 アタリメはしばらくの間何も言わなかったが、やがて口を開いた。 「イカでもないしタコでもないヤツじゃ・・・」 「イカでもないってどういうことだ!?」 アタリメが口を開いた瞬間にミントの口は開いていた。 アタリメはう~んとうなると、 「ヤツはイカでもタコでもない、何かなんじゃ・・・じゃが、それが分からん」 アタリメもミントもしばらくの間何も言わなかったが、やがてアタリメが口を開いた。 発せられた言葉をミントは信じられなかった。 「じゃがきゃつはnew!カラストンビ部隊の隊員ではないからの」 「今日は本選の大会見に行こうかな~」 カサネがそう言いながら歩いている。 「え、見るだけでしょ?つまんないの~」 ハチはそう言ったが、カサネは分かってないな~と言った。 「いやいや、他の人のプレーを見るのはいいことだよ、立ち回りの勉強になるし」 「でも私、試合は勘でやってるけど」 『え』 カサネとエイトが同時に足を止めた。 「いやいや...勘ってどういうこと」 ハチは首をかしげた。 「え~?だってミントさんがそう言ってた?からさ~」 ハチは昔、ミントが試合のルールを教えてくれていたことを思い出した。 カサネは、あっ、と言ってスマホを取り出した。 「あ~、まだ返信来てない」 ハチはどうしたの、と聞いた。 「いや~、試合を見よう、ってメールしたんだけど、まだ返ってきてないや~。既読にもなってない」 ハチはそっか...と言って、呟いた。 「何かあったのかな」 (ロットはどこだ・・・!どこにいる・・・!) ミントは走っていた。アタリメの言葉が頭の中でこだまする。 "じゃがきゃつはnew!カラストンビ部隊の隊員ではないからの" (隊員じゃないってどういうことだよ・・・!) ミントは道を右にまがろうとしたが、マンホールの蓋が開いていて、誤って入ってしまった。 「痛っ・・・」 ミントが飛び出してきたところはタコツボバレーのようで、少し違うところだった。 「あれ?」 何か小屋のような所の椅子に、アオリとホタルが座って話していた。 「3号、お久!」 「1号、2号!?」 ミントは急いで駆け寄った。 「なんでココに?」 「それこそ3号はなんでココにおるん?」 聞き返された。 「いや、なんかマンホールに入っちゃって・・・」 その話を聞いて、アオリとホタルは吹き出しそうになった。 「あははは、3号らしくないね」 「昔の3号みたいやね」 2人がそろって笑うので、ミントはふくれっ面になった。 「あぁ、3号ごめんごめん」 ホタルが深呼吸をした。 「いやぁ、3号らしくないと思ってね」 「何だよそれ」 ミントはまだふくれていたが、ホタルが、おはぎあるよと言ったので、普通の表情に戻った。 「ここはね、タコツボキャニオンなんよ」 「たこつぼきゃにおん?バレーじゃなくて?」 「そう、キャニオン」 ホタルが、あ、と呟いた。 「そういえば、最近ヒロくんも来とるよ、知りたいことがあるからって」 「えっ」 「なんか真剣な顔してたね、なんか様子が違った」 「ヒーローブキがボロボロやったから、うちらのと変えてあげたんやけど」 ホタルとアオリが顔に手を当ててそう言った。 「ヒーロー装備も貸そうとしたんやけど、いいって言って」 「装備なしはいくらなんでもヒロでも危険だよね」 ミントは走り出そうとしたが、足が動かなかった。 「そういえば・・・ヒロが隊員じゃないって、本当か?」 アオリがう~ん、とうなった。 「隊員ではないんよ。じいちゃんが認めてないから。まぁ、うちらも隊員にはなれないな、と思ってるんやけど」 ミントはなんで!?と言った。 「ヒロは、運動神経は抜群だし、足も速いし、脚力もあるし、体力もあるし、バトルは強いし、なんでも出来るのに・・・!」 「そこなんよ」 ミントはえっ・・・と言った。 「なんでも出来るからって、自分の力に溺れそうなんよ、ヒロは」 「それに目に光がないというか」 ちょうどそこへ、ロットがやって来た。 「!」 ロットはミントに気づくと、逃げだそうとしたが、ホタルに止められた。 「いいところに来た。ちょっと来て」 ロットは黙ってホタルの前に立った。 「そっち向いて」 ホタルが指さした方向は、ミントがいる方向。 「・・・・・・」 ロットは黙ってミントの方向に向いた。 「3号もこっち来て」 ミントは一瞬、えっと言いそうになったが、アオリの前に立った。 「じゃあ、私達はこれで」 アオリとホタルがそそくさとその場を離れていった。 「えっ、ちょっと」 ミントは意味が分からず、その場を離れたくなったが、何かに引き戻されるような感じがして、その場を離れられなかった。 ミントはふいにロットに聞きたいことを思い出して、ロットに訪ねた。 「イカじゃないってどういうことだよ」 ミントの言葉を聞いた後、ロットは表情を変えないまま言った。 「誰から聞いた」 ミントはそれに応えなかった。 「今応える必要はないだろう」 「なんでだよ!」 ミントは気になって仕方なかった。 「いい加減にしろよ」 「うるさいな・・・」 ロットが立ち去ろうとしたので、ミントはこれまでの怒りが爆発した。 シューターを取り出し、ロットの首につきつけた。 「・・・っ」 ロットは払いのけると、ミントの顔の前に手を掲げた。 次の瞬間、ロットの手のひらからすさまじい衝撃波が出た。 「!」 ミントは避けることが出来なかったが、後ろに吹っ飛ばされただけで済んだ。 「チッ」 ロットは舌打ちをすると、逃げていった。 「センパイ!?なんでこんなところいるんですか!?」 カサネの声が聞こえ、ミントは目を覚ました。 「なんでマンホールの横なんかにいるんですか!危ないじゃないですか!」 「・・・?」 ミントはいつの間にかハイカラスクエアに戻ってきていた。 (何があったっけ・・・) 「あ、そだ!センパイ!試合見に行きましょ!試合!」 「あ・・・あぁ・・・」 ミントはカサネに連れられていった。 「ふ~ん、試合見学ねぇ...」 「思っていたより白熱してたよ~」 ハチがニコッと笑った。 「あ、そういえばさ、シャルは幽霊になる前どんなことしてたの?」 シャルはう~んと言うと、 「研究所で働いてた」 と言った。 「けけけけ研究所!?」 「そう。研究所。そこでね、色々と研究とかしてたんだけど、ある日実験が失敗しちゃってね~」 「それで...幽霊に?」 「いや~、それだけじゃ無いんだけど~」 シャルは姿勢を正すと話し始めた。 「研究所ではね、ブキとか、インクとか、インクリングについて研究してたんだ。で、ある時、実験が失敗しちゃって。けど、その実験の失敗で、生命体が出来たんだ」 「生命体?」 「うん。それで、その体について調べていったら、不死身だって事が分かったんだ」 「不死身!?」 「そう。年もとらないし、致命傷を負ったとしてもすぐに回復する。そもそもそう簡単に傷を負えない体だったけどね。攻撃はインク攻撃よりもすさまじい攻撃が使えるし、外見は一瞬で変えられる」 「ってことは・・・」 「そう、完璧に近い生命体が出来たの」 「すごい・・・」 「けど、一点だけ弱点があって、自分の力に溺れちゃうところが弱点なの。まぁ、他にも何個か欠点とかはあるけど、一番大きいのがそれ」 シャルは一度深呼吸すると、また話し始めた。 「それでね、その生命体が、ある日実験室を抜け出したんだ。すごい丈夫なはずなんだけどな~あの部屋」 「はぁ・・・」 「そして、覚醒してから数秒のうちに、全ての力を使って大暴れし始めて。あれは本当凄かったな~...けど私の前に来た時だけ、何故か攻撃をやめたんだよね~。まぁ私があいつの面倒見てたようなもんだから仕方ないか」 「面倒?」 「あぁ、言葉覚えたり文字の書き読みとか。まぁ、あいつは一回で覚えたけどね」 「一回...」 「だから恐ろしくなった研究所の皆が頑丈な研究室に閉じ込めてたんだけど、とうとう破られちゃって」 「それで、シャルはどうして幽霊に?」 「事故だよ。あいつが出した攻撃が壁越しに当たってさ。それではまだ死なずに済んだんだけど、壁が壊れて倒れてきてさ。それで」 「はぁ...」 (そんなことがあったのか) ハチはそう思った。 「あ、そういえばそいつを君たちは見ているよ」 「えっ?」 ハチは聞き返した。 「見てるって?」 「うん、絶対に、一回はね」 【第十四話終わり 第十五話に続く】