=プロローグ= 私の名前は「恋爽 祭(れんそう まつり)」。 どこにでもいる女子高生_____の、はずでした。 ある日を境に変わってしまった。狂ってしまった。 本当に悪いように変わったとは言えないけれど。 おそらく分かるのは、私達の「闇」が晴れたときではないでしょうか。 ...まあ、長ったらしい前説はおいておきましょう。 これは、私にとってはノンフィクションで、あなた達にとってはフィクション。そんな物語。 =本編= 市立月民花高等学校。正しい読み方はわからないから、生徒や先生は皆「つきたみはな」と呼んでいる。確かに、この学校の校区…というかこの街には海や川、湖といえるものがない。皆は「尽きた水縹(みはなだ)とも取れるよね。」と言っていた。私はその高校に通っている、真面目で普通のどこにでもいる平凡な高校2年生です。...ここまで言ってしまうとフラグが立ってしまうような気もしますが。 いつも通りの時間に出て、自転車に乗り我が校へ向かい、学校の正門をくぐり、駐輪場に自転車を置き、下足室へと向かう、いつも通りの日常。 1‐35_1は組、35は出席番号_と書かれた下駄箱を開け、靴を脱ぎスリッパを取り、履き、靴を下駄箱に入れ... 「...手紙?」 私が靴を入れようとしていたその場所には、白い便箋が少しも汚れがついていない状態で置かれていた。例えるなら、恋愛漫画の告白するために呼び出す際に使われる”アレ”。 「...まさかね。」 と思いつつ、流石にほうっておくわけにもいかないので便箋を手に取り、靴を入れるべき場所に収め、下駄箱を閉めた。教室までの廊下を歩きながら、投函されていた白い便箋を開ける。一通の手紙が入っていた。私は二つ折りにされたそれを開く。そこには一言、 { 放課後、屋上で待つ。 } と書かれていた。それもPCで打ったような整った字で。 「本当に恋愛漫画じゃん...」 つい声が漏れた。が、私にはそんな恋人関係になるような人物は居ない。確かにクラスで孤立しているわけでもなく、なんなら学級委員までしているが、そんな好きになられるようなことは一切していない...と思う。正直怪しさの塊だ。だがもし、この手紙が何らかの間違いであそこに入れられていたのだとしたら、送り主を特定し、返却する必要がある。 でも怖いので、友達2人に相談してみることにした。 「この手紙下駄箱に入ってたのだけど、どういう意図か分かる?」 「なにそれ恋愛漫画じゃんw」 ギャルのような風貌の友だちが言う。 「でもでも!入ってるってことはその人は祭のこと好きってことじゃない?」 ゆるふわな風貌の友だちが言う。 「私好きになられるようなことした?」 「学級委員長で面倒見もいいし、真面目だし。惹かれる面はいっぱいあるんじゃね?」 「そうそう!祭は誰彼構わず優しいもんね〜」 「行きなよ!絶好のチャンスじゃん!」 「私達は二人で帰っとくからさ〜」 ...と言われてしまった。もうここまで来たら逃げられない感が強い。仕方がない。放課後、屋上に行こう。 階段を登り、屋上へと繋がれている扉を開ける。 あまり屋上に来たことはなかったが、夕暮れに照らされた街並みはとても綺麗で、吸い込まれそうだった。 「...って、こんなコトしてる場合じゃない...」 そう。私はこの手紙の送り主を突き止めなければいけない。でも人が見当たらない。一体どこに...?やっぱりイタズラだったとか?だとしたら許せないけれど。 「遅れてるのかな...?」 「尽きた水縹…なぁ…おもろい考察するやんけ…。」 上の方から関西弁の男の人の声が聞こえる。声の方向_扉があった場所の真上_には、前髪で右目を隠し、左耳にピアスを付け、後ろで髪の毛を小さく束ねた、喪服に身を包んでいる男がいて、アンテナのような場所の先端に、両足で立っていた。男はこちらに気づいたようだ。アンテナから降りて私の眼の前に立った。 「お。来とったんやなぁ...流石、学級委員長やな。」 「...誰ですか。」 我が校の先生にはこのような格好をした先生はいない。だから必然的にこの男は「不審者扱い」になる。 「そんな警戒せんでもええのに...。手紙読んで来てくれたんやろ?その手紙はちゃんと持っとるんやろな?」 「.....。」 「...はぁ、単刀直入に言うで。俺等はあんたの才能を見込んで、ある仕事をしてもらいたいんや。」 「仕事。」 「そう、仕事や。あんたの社会的地位で言うと「バイト」と言う方がわかりやすいとは思うけど。」 「バイト...ですか。」 「給料は良くないけどな...wでもそのかわり、人生経験と人助けはたんまりできると思うで?」 人生経験と人助け。まさに私が求めていたものだった。いや、ここで釣られてはいけない。私は言及しないといけない。もちろん他にもあるけど、この男はこの高校の正しい名前を知っている。興味があった。 「この高校の名前を知っているんですか?」 「ん?あぁ、知っとるで。あんたらは「つきたみはな」ってよんどるらしいけど、ホンマは漢字自体違うからな。 正しい漢字は、「死」の間に「民」を挟んで「がつみんか」や。なんでか途中から改名してもーたけど。 ちなみに優秀な君なら、この名前が何を表すか分かるんちゃう?」 民。何の変哲もない、小学生になったら誰でも習うであろうあの漢字。しかし語源的には、目を針で突いて見えなくした奴隷を指す言葉から派生し、支配下にある人々。つまり奴隷。それが語源という説がある。つまりこの学校…いや、この街は。 「死に囲まれた、奴隷が住む場所…?」 「まぁ、残酷的にいえばそうなるな。奴隷を人間に置き換えてほしいところではあるけどな。」 「死に囲まれた人間...」 「この街に限らずっていうのは確かにそうやねんけど、この街は特にそうゆう面が強いからなぁ。ホンマ、この名前つけたやつセンス狂っとるわ。」 何を言っているのかがわからない。死に囲まれた人間が多いということでいいのかな。そうこう話をしているうちに夕暮れに照らされいていた街は月光に照らされ、美しく不気味にも見えるほど輝いて見えた。 「おっと。もう時間が来てもうたか。」 そう言うと男は腕につけていたスマートウォッチを操作して、誰かと電話をしていた。 「骸、棺、準備はできとるか?」 <こちら骸。準備はとっくの昔にできてるぞ!...棺もなんか応答してくれ。> <...棺。いいよ。> 「りょーかい。まあ各々始めといてや。俺はちょっと話さないかん人がいるんや。」 <できるだけ早く来てくれねーと困るからな!> 「わかったわかった。そんじゃ、よろしく頼むで。」 と言って通話を終えた。腕をおろし、またこちらへと視線をやる。骸?棺?なんだそれは。人の名前? 「...てなわけで、俺は早くいかないと怒られるからな。さて、バイトの件。やってくれるか?」 ...バイトの話なんてろくにされてない気がしているのは私だけ?流石に怪しさの塊というか...というかそれより 「私は家に帰らないといけないので、バイトなんてしている暇はありません。」 「...そう言うやろなとは思ったけどな。バイトの詳細だけ話しとくか...話したら興味持つかもしれんもんな。才能を放っておくのには惜しい存在やし。 「俺達がやっている仕事...まぁバイトはざっくり言うと人間の心の闇...悪意を刈り取る仕事や。 「人間の心の闇は、野放しにしておくとどんどん膨らんで、溢れて、人の形をした怪物になってまう。羨望、嫉妬、欲望...その他もろもろが人間を蝕み、人間の形すら無くなってしまう。 「そうなる前に、俺らは人々の心の闇を刈り取る、「心の死神」をしとるんや。」 「心の...死神。」 「そ。俺は今からその仕事をしに行くけど、ついてきたいんやったら、下駄箱に俺が入れた便箋の中身をまた開けてみたらええわ。」 そう言って男は漆黒のローブをどこからか取り出し、身に纏った。いつの間にか深紫の鎌を手に持っていた。フェンスの上に立ち、こちらを振り向く。 「じゃ、そゆことや。よろしく頼むで。」 フードを被り、そのまま「落ちた」。 ...え?落ちた!?フェンスを掴み、下を見るとそこには住宅街が広がっているだけだった。 「...謎すぎる。」 あの男はついて来たいなら便箋を開けろと言っていた。興味本位で、開けてみた。その中には、もう手紙は入っていなかった。あったのは、「黒い布」と「濃紺の鎌」のキーホルダーだった。黒い布を広げると、ローブであることが分かる。さっき男が着ていたものにそっくりだった。 「制服ってことかな?」 ローブを着てみる。サイズは誂えたようにぴったりだった。濃紺の鎌のキーホルダーは、「本物の鎌」になっていて、振りやすいサイズと重さだった。そして私はフードを被る。すると、フェンス越しに見えたのは、月光に美しく照らされた街ではなく。 黒いナニカが渦巻いている、不気味な街だった。 続く。 =あとがき= どうも皆様こんにちは。RINBERUと申します。 新作小説です。自信作。第一巻の第一章です。 絵は申し訳程度に載せてますが今回だけです。 中途半端に終わったのは、そのままつらつらと書いていたら字数制限が来たからです() 「あなたの闇、刈り取ります。」まあ「あな刈り」とでも呼んでください。 では、第二章でまたお会いしましょう。
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