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小説 「グリーンフラッシュ」

AZAzuAzuAcchan•Created June 6, 2025
小説 「グリーンフラッシュ」
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Instructions

それは、特に何事もない普通の日だった。 別に、何か大きなきっかけがあったわけではない。その日が何かの記念日だったとかでもない。 「…死にたいな。」 ただ、そう思ってしまっただけだった。 朱里お姉ちゃんにはずっと迷惑をかけてしまっている。だって、朱里お姉ちゃんはお金を稼ぐために、中学校を卒業した後高校に行かず働いている。そのせいで、朱里お姉ちゃんは家にいる時間が短いし、家に帰って来れない日もある。今日だって、朱里お姉ちゃんが帰ってくるのは私が寝た後だ。 遥お姉ちゃんとお母さんの事だってそうだ。遥お姉ちゃんが死んじゃったのは私のせいだし、それが原因でお母さんも死んじゃった。 私なんかが生きてていいわけないんだ。私は死ぬべきなんだ。 窓を開け、ベランダに出る。そして、柵に寄りかかって夕陽を眺める。ここからの景色はずっと変わらない。3年前、7年前もずっとこうだった。別にそこまで綺麗な景色ではないけれど、私はここが好きだった。眩しい夕陽に目を細めながら、下を見る。ここはそんなに高くないけれど、死ぬのには十分だ。本当だったら朱里お姉ちゃんに色々伝えたかったけど、そんな事言ったら止められてしまうだろう。だから、色々と手紙を書いて、リビングの机に置いておいた。 もうこれで、思い残す事はないだろう。そう思い、ここから飛び降りようと思った。 その時だった。 「あー…、ちょっと勝手に死のうとするの、やめてもらっていいか。それ、一応私の体でもあるからな。」 どうして人の声がするのだろう。朱里お姉ちゃんはまだ帰ってこないはずだ。それに、今のは朱里お姉ちゃんの声ではなかった。だったら、一体誰なのだろう。 恐る恐る振り返って見ると、そこにいたのは、 私とよく似た“誰か”だった。 そして、みるみるうちに周りが白く染まっていき、最後には何もない真っ白な空間になってしまった。 「えっと…あなたは誰なんですか……?」 「私はリムだ。ま、お前の好きなように呼べ。」 リム…聞いたことがない名前だった。少なくとも、私の友達にはいなさそうだ。 「じゃあ…リムさん、ここはどこなんですか…?」 「簡単に言うならば、瑠美、お前の頭の中だ。」 「私の…頭の中……?」 ますます理解できなくなる。それに、どうして私の名前を知っているのだろうか。 「そうだ。そして、私はお前の裏人格だ。」 「裏…人格……?どういうこと…?」 彼女が本当に私の裏人格なら、私は二重人格ということになってしまうのだろうか。 「簡単に言うなら、お前の心の中にある想いが分離して一人歩きして、自我を持ったということだな。」 詳しくはわからないが、元々私だったのがそこから分かれて、リムさんとなったのだろう。 「じゃ…じゃあ、私と人格を入れ替わって、代わりに私の体を動かせるんですか?」 「残念ながら、私はまだ生まれたばかりで未熟だ。元の想いが弱すぎたせいか、人格の交代は不可能だ。今のところ、お前と会話するぐらいしかできないな。」 「そ、そうなんですね……。」 よく物語に出てくるような二重人格とはちょっと違うみたいだ。 「ま、とりあえず本題に入ろう。瑠美、お前さっき死のうとしたな?」 「……っ⁉︎」 まさかそんなことを聞かれるとは思ってなかった。さっき私に話しかけてきたのはリムさんだったみたいだ。 「やっぱそうなんだな。で、何故死のうとしたんだ?お前はまだ12、十分未来はあるぞ。」 「えっと……それ、は……。」 理由なんて言えるわけがなかった。言ったら、きっと止められてしまう。 「…黙ってたら何もわからない。私には、お前の裏人格として聞く権利と義務がある。」 「………。」 リムさんは色々言ってくれているが、それでも話す気にはなれない。それに、言ったところで私が楽になるわけでもない。 「…もういい。言いたくないなら言わなくていい。正直、何となくは察しがついている。」 「あ……はい。」 わかっているのなら、どうして聞いたのだろう。リムさんが何を考えているのか全くわからない。 「じゃあ質問を変えよう。瑠美、お前どうせ『自分は死ぬべきだ』とか考えてるんだろ?」 「……っ…。」 …どうしてリムさんはここまで知っているんだろう。 「どうせ、死のうとした理由にそれもあるんだろ。ま、言わなかったのは『止められたくない』とかだろうな。」 「だから、この際はっきり言っておく。私はお前を死なせるつもりはない。お前が死のうとするなら、絶対に止めてやる。」 思ったより細かいところまで気づかれていたみたいだ。でも、どうして私が死ぬのを止めようとするのだろう。 「……何で…止めるんですか…?」 「簡単だ。お前が死ぬことにメリットが一切無いからだ。」 「…………え?」 思っていたのと全然違う答えが返ってきたので、驚いてしまった。てっきり、『死ぬのは良くない』だとか、『生きれなかった人の分まで生きろ』だとか言ってくるのだと思っていた。 「質問だが、お前は自分が死ぬことで周りが楽になると思っているのか?」 「…はい……だって、私がいなくなれば朱里お姉ちゃんの生活は楽になって、今みたいに沢山働かなくてもよくなりますから…。」 そうだ。私のせいで朱里お姉ちゃんは今もずっと働いているんだ。私が死ねば、かかるお金が少なくなって生活が楽になるに違いない。 「確かに、お前の姉の生活は楽になるかもしれない。だが、精神的にはどうだ?」 「…え?」 「両親や姉と妹を失った上でお前まで死んだら、お前の姉の心はどうなる?」 「…………あ。」 全く考えていなかった。朱里お姉ちゃんの生活とかのことばかり考えていて、お姉ちゃんがどう思うかは何も考えていなかった。 「その反応、一切考えていなかったみたいだな。家族を目の前で失った悲しみならお前が一番わかるだろ。それと同じくらいの悲しみと後悔を、お前は姉に背負わせようとしていたんだぞ。」 「……………。」 リムさんの言ったことに対し、何も言えなかった。その通りなのだ。私は、朱里お姉ちゃんに耐えきれないほどの悲しみを背負わせようとしていた。 「わかったならそれでいい。だから、頼むからもう死のうと思わないでくれ。」 「………。」 「いや頼むから黙らないでくれ。また説得するのは嫌なんだ。」 正直、約束はできない。私の心なんて、どうせすぐに変わってしまうから。でも、ちょっとは努力しようと思った。 「わかった。約束はしなくていい。でも、死にたくなったら私に言え。そしたら私がお前を止めてやる。」 「…はい。」 そう答えると、あたりが段々と元のベランダに戻っていく。それと同時に、リムさんも薄くなって消えていく。 「あーそうそう、一つだけ言っておく。私はしばらくお前と会えないだろうが、お前の頭に語りかけて会話することは可能だ。何か助けが必要だったら呼んでくれ。ま、こっちからお前の行動は全て見れるから、お前が呼ばなくても勝手に話しかけるかもしれないがな。」 そう言い残し、リムさんは完全に消えてしまった。リムさんとしばらく会えないのは寂しいが、仕方がない。諦めて、また柵に寄りかかる。すでに日は落ちており、空はもう暗くなっていた。 少し遠いところから、鍵を開ける音がする。きっと朱里お姉ちゃんが帰ってきたのだろう。仕事終わりの朱里お姉ちゃんを迎えるために、私は玄関へと向かっていった。

Description

誤字脱字等あったらコメントで言ってください めっちゃ久しぶりに小説書いたんで下手です 多分この小説読む前に瑠美ちゃんと家族について知っておいた方がいいので、見ることを推奨します↓ https://scratch.mit.edu/projects/992694242/ 最初、タイトルを「黄昏時の緑閃光」にしようと思ったんですけど、あまりにもコナンの映画のタイトルみたいになってしまったので断念しました

Project Details

Project ID1185688751
CreatedJune 6, 2025
Last ModifiedJune 9, 2025
SharedJune 9, 2025
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