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マガツヒメvsくねくね

SWSWAP-ASCEND-ADJ•Created May 3, 2025
マガツヒメvsくねくね
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Instructions

本気なぞ1mmも出しとらん

Description

ボロ切れと、頭のお札、そして掌に収まる天逆鉾と共に、マガツヒメの気まぐれな旅は続いた。新しい体での歩行は少しずつ安定してきたが、未だに目的地はない。ただ、面白そうなもの、退屈しないものを求めて、彼女は彷徨っていた。 夏の日盛りの頃。熱で歪む空気の向こう、遠くに見える水田の畔に、それはいた。 陽炎のように揺らめく、細く白い物体。不規則に、しかしどこか滑らかに、くねくねと体を捩じっている。人間には理解できない、奇妙で不気味な動きだ。 マガツヒメは立ち止まった。2048個の目(今は白黒反転した縦長の瞳に集約されているが、その認識能力は健在だ)が、遠くの「それ」を捉える。 (んー?なんだあれ。変な動き。新しいお化けかな。でも、ちょっと遠いね。ダルいから近づくのはやめとこうかな。) いつものように、まずは観察。その白い塊は、ゆっくりと、しかし確実にこちらに近づいてくる。そして、距離が縮まり、その異様な「くねくね」とした動きがはっきり見え、その存在が「人間には理解してはならないもの」であるという霊的な性質を感知した、その瞬間。 ゾクリ、と背筋に冷たいものが走る。それは恐怖ではない。情報過多による、あるいは存在そのものに内在する「狂気」に触れたことによる、本能的な拒絶反応だ。普通の人間であれば、ここで精神に異常を来たす。 しかし、マガツヒメは普通ではない。無限の呪力を持ち、因果律すら操る存在だ。くねくねの放つ精神汚染など、彼女の強固な霊格の前には意味を成さない。 (あ、これ、近づくとヤバいやつだ。頭が変になりそう?へー。面白い。でも、ダルいからなりたくないかな。) 内なる意識は冷静に分析する。そして、体内の子供たちの声が、かすかに怯えを示す。 「こわい」 「へんなの」 「こっちくる…」 子供たちの声に、マガツヒメの意識が応える。うん、ちょっと厄介そうだね、と。 「ま、仕方ないか。ダルいけど、対処するか。」 マガツヒメは、その場に立ち止まったまま、両手を僅かに構えた。能力を使うのは、あの霊媒師以来だ。彼女の周囲の空間に、不気味な歪みが生まれる。そして、空中に、地面から、あるいは彼女の体から直接、おぞましい人間の頭部が複数、次々と出現した。白黒反転した瞳を持つ頭部もあれば、血が滲むような、あるいは目が無数についた肉塊だった頃を思わせるものもある。 出現した頭部が一斉に、くねくねに狙いを定めた。そして、その口や眼窩から、ビーム(ブラスター)が発射された。しかし、以前霊媒師を消滅させた時のような、一点の光も残さないような破壊力は無かった。マガツヒメは、意図的にその威力に制限をかけていたのだ。 バシュン!バシュン! ビームはくねくねに命中し、その体を弾き飛ばす。白い体が不規則な軌道を描いて宙を舞い、水田に叩きつけられる。くねくねはすぐに起き上がり、再びあの奇妙な動きで迫ってくる。その精神汚染の波動も全力で放っているようだが、マガツヒメには全く効かない。 マガツヒメは表情を変えず、次々と頭部を召喚し、ビームを浴びせ続ける。ビームはただ「殴る」ようにくねくねを弾き、叩きつけ、地面を転がす。くねくねは抵抗できない。精神攻撃は通じず、物理的な干渉も意味を成さない。ただ一方的に、威力制限されたブラスターでボコられ続けるだけだ。 「あれー?結構丈夫だね。てか、なんでそんなに頑張んの?ダルいだけじゃん。」 内なる声で、くねくねに語りかける。外部には不気味なビーム発射音しか響かないが。 くねくねは、何度倒されても立ち上がり、奇妙な動きで接近しようとしたが、圧倒的な手数と正確さで放たれるビームの前に、距離を詰められない。白い体は、ビームを受けるたびに傷つき、その動きも鈍くなっていく。 そして、ついに、くねくねの動きが止まった。水田の畔に倒れ伏し、僅かに体をくねらせるだけ。その霊的な波動も弱まっている。 マガツヒメはビームを止めた。召喚された頭部が、彼女の周囲で静止する。 (ん?終わった? 降参かな。) くねくねから、抵抗の意思が消え失せているのを感知した。代わりに伝わってくるのは、疲弊と、そしてかすかな「従います」という意思表示のようなものだ。 「へー、降参するんだ。偉いね。無駄な抵抗してもダルいだけだし、賢明な判断だと思うよ。」 マガツヒメは、頭部を消滅させた。そして、倒れているくねくねに近づいていく。白い体は、泥と傷で汚れ、もうあの不気味な輝きはない。 「で、どうすんの?もう終わり?」 くねくねは、僅かに体を揺らし、マガツヒメの足元に擦り寄るような仕草を見せた。その霊的な気配から、従属の意思が明確に伝わってくる。 (あ、ついてくる気? ま、いいか。丁度どこ行こうか迷ってたんだよね。何か知ってる?) マガツヒメは、屈みこんでくねくねを見つめた。白黒反転した縦長の瞳が、情報過多を乗り越えたその存在を捉える。 (んー、なんか知ってるみたい。ダルいから案内してもらおーっと。) 「ん。分かった。なら、案内してよ。ダルいからよろしくね。」 マガツヒメがそう思った瞬間、くねくねは再び起き上がり、しかし攻撃の意思は全くなく、ゆっくりと道の先へと動き始めた。どうやら、どこか特定の場所へマガツヒメを連れて行こうとしているらしい。その霊的な気配が示す方向は―― (きさらぎ駅? へー。面白そうじゃん。ダルそうだけど。) こうして、マガツヒメは最初の「部下の怪異」を得た。規格外の力を持つ少女と、一方的に打ち破られた奇妙な怪異。二人は、夏の日差しの中、きさらぎ駅を目指して歩き始めた。くねくねは、マガツヒメという規格外の新入りを、自身のテリトリーである怪異たちの集まる場所へと案内することになったのだ。

Project Details

Project ID1169528789
CreatedMay 3, 2025
Last ModifiedMay 3, 2025
SharedMay 3, 2025
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