異形共存高校の放課後。教室の窓際に置かれた、陽当たりの良いソファで、アドルフ・カイザーは珍しくリラックスした様子で座っていた。午後の穏やかな日差しが心地よく、微かに眠たそうにしているかもしれない。彼の頭には、ピンと立った狐耳があり、背中からは九本のフワフワとした尻尾が伸びている。 そのカイザーの姿を見て、女子生徒たち（九尾のユキ、ベニート・ピッツァ、そして他のクラスメートの女子たち）は、ひそひそと話し始めた。彼の狐耳や尻尾、そして以前見た肉球。あの威圧的なカイザーにも、天狐としての可愛らしい一面がある。特に、彼がリラックスしている今、その「もふもふ」とした部分を、「なでなで」したり、「もふもふ」したりしてみたい、という衝動が、彼女たちの間で高まっていた。 女子生徒たちは、意を決して、カイザーの傍らに集まった。カイザーは、彼女たちの気配に気づき、怪訝な顔をする。 「…何だ…？騒がしい…」 カイザーがそう言う間もなく、女子生徒たちは、彼の傍らに集まり、そして… 遠慮なく、彼の耳や尻尾に手を伸ばし、「もふもふ」し始めた。 「わあ！ホントにフワフワ！」 「柔らかい！」 「あったかい！」 複数の手によって、同時に様々な場所が「もふもふ」される。耳を優しく揉む者、尻尾を両手で掴んで顔をうずめる者、首元のフワフワした毛を触る者。 カイザーは、突然の「もふもふ」攻撃に、戸惑いを隠せない。そして、彼の顔に、普段の威圧感や冷たい表情からは想像もできないほどの、恥ずかしさが浮かんだ。顔が赤らめ、視線を逸らす。言葉に詰まり、か細い声しか出ない。 「や…やめろ…！」 「な…何をする…！」 普段の彼からは考えられない、人間的な恥ずかしさだ。女性に、ましてや複数の女性に、体を触られることに慣れていないのだろうか。あるいは、天狐としての無防備な場所を触られることへの、純粋な照れ。彼の危険な思想は、この状況では完全に無効化されている。 しかし、恥ずかしさを感じながらも、女子生徒たちの優しく丁寧な「もふもふ」に、徐々に心地よさを感じ始めた。天狐として、耳や首元、お腹といった特定の場所を触られることの生理的な快感やリラックス効果。瞳がトロンとしてくる。狐耳が、恥ずかしさでペタンと倒れたまま、微かにピクピクと動く。九本の尻尾も、女子生徒たちの手の中で、気持ちよさそうに、ユラユラと揺れる。 恥ずかしさと心地よさが混じり合った、何とも言えない複雑な表情だ。 そして、心地よさが深まるにつれて、睡魔が襲ってきた。この恥ずかしい状況なのに、眠ってしまいそうになる。抗おうとするが、体が重くなる。女子生徒たちの温かい手と、「もふもふ」の感触が、睡魔を加速させる。 恥ずかしさと睡魔の葛藤の末、カイザーは睡魔に抗えなくなった。女子生徒たちに「もふもふ」されながら、彼はゆっくりと目を閉じた。 そして、そのまま、安らかな寝息を立て始めた。顔は、恥ずかしさと心地よさが混じり合った、何とも言えない寝顔だ。普段の彼の危険な雰囲気とのギャップは、あまりにも大きかった。もしかしたら、そのままへそ天になっているかもしれない。 女子生徒たちは、カイザーが、恥ずかしがりながらも「もふもふ」され、最終的に寝てしまったことを見て、驚愕しつつも、歓声を上げた。 「寝ちゃった！」 「嘘でしょ！可愛すぎる！」 「恥ずかしがってたのに！」 自分たちの「もふもふ」によって、あのカイザーがこんなに無防備になってしまった。その規格外れの達成感と、可愛さに、彼女たちの間に和やかな雰囲気が生まれた。 山田は、遠くからその様子を見て、「やばい…カイザーが女子にもふもふされて…しかも恥ずかしがって寝た…」と、呆然としていた。 女子生徒たちは、眠っているカイザーを起こさないように、声を殺して笑いながら、そっと見守る。彼らの規格外れの側面とは異なる、人間的で（あるいは動物的な）可愛らしい一面に触れたことによる、温かい感情が、彼女たちの心に広がった。 アドルフ・カイザーは、女子生徒たちに耳、尻尾、首元などを「もふもふされて恥ずかしがるけど結局寝た」。それは、彼の意外な一面と可愛らしさ、そして生徒たちとの間の温かい交流を描く、ほのぼのとした一コマだった。彼の持つ規格外れの力や思想は、この温かい時間には関係なかった。ただ、可愛がられて恥ずかしがりながら眠ってしまう天狐の姿があった。異形共存高校の予測不能な日常に潜む、意外な温かさや可愛らしさで彩られた。
