6.5畳から夢を見る EP.1 忘れていた自分 「将来!!僕は大学へ行き、社長になりたいです!!」 …高校へ入学してもうすぐ1年 家を離れ、東京での生活にも慣れてきた。 東京と言っても家があるのは埼玉だ。 2DKと6.5畳の2部屋、お風呂とトイレ、それなりに入る押入れ それ以外はなにもない小さなアパートだ。 16歳になり原付きの免許を取った。 中古のC50 カブ 状態いいはとはいい切れず今もたまに壊れる… 学校からアパートまでは距離がある。 はじめはバスで通っていた。 寝坊して走りながバス停へ向かっていた。 貧乏な生活。自由はあまりできない。 バイトと親からの小遣いを貯金と節約しながら使っている。 今日はためたお金でパソコンを買いに行く。 昼飯を食い終わりカブにまたがりエンジンをかける。 家電量販店まで片道7kの道を車横目に走っていく。 … 小さかったあの頃、何でもできる気がした。 興味のあるものがたくさんあった。 ゲーム、車、絵、音楽、スポーツ… 楽しかった…あの頃。 ゲーム機とテニスのラケットは押入れの奥でホコリを被っている。 鉛筆は新品のまま箱に入り、 小遣いはたいて買ったコンポは電源繋がれず置かれている。 やる気と自信に満ちていた自分の足はいつしかくすんで見えるようになった。 … パソコンを買って帰りすぐにセッティングした。 前のパソコンからデータを移植するとき懐かしいものを見た。 中学生の時に描いた車の絵だった。 見ているうちにだんだんなんとも言えないキモチに襲われた。 むしゃくしゃしてパソコンそっちのけでバイクへ駆け込んだ。 携帯や財布も持たず右手にキーを握りしめ、夜の中へ飛び込んだ。 30km以上速度を出してちょっとの赤信号は無視して人が居ない静かな山を登っていった。 行く宛先も無く。 気づくと山の中、ダムの辺まで来ていた 初めて来た。 対岸には少し家やお店の明かりがあるが、音は聞こえない。 バイクを降り、展望台へ登った時 そこからは東京の光輝く夜景が見えた。 景色を見ているとなんだか心が浄化されていった。 キモチがスッキリした時、財布の中に免許証入れとることと、今財布を持っていないことに気づき急いで家に帰った。 家についてホッと一息。 ガソリン無駄にしちゃったかな… そう考えながら部屋に戻るのでした。 次の日 寝坊した。 先生に怒られる最悪なスタートをきった。 EP.2 やってみよう 明日から長年思っていたインターネットでの活動を始めてみる。 本格的には取り組まないけど 押し入れの奥にあるゲームたちを実況しようと思っている。 撮影用カメラや編集ソフトなどは事前に集めておいた。 早速押し入れからゲームを引っ張り出してみたが、 あまりにも汚い。 ホコリが内部まで入っていいる。 これは最初の動画はゲーム機分解・掃除で決まりだな。 そう思った。 早速道具を買いにホームセンターへ。 シートや除菌剤ついでに私的なお掃除グッツを買った。 そしてアマゾンでゲーム機を分解する専用ドライバーを注文した。 慣れない手つきで動画を撮影しながら分解していく。 まず手始めにゲームキューブを分解した 内部は思っていた以上に汚く、やりがいがあった。 淡々と掃除してSwitch、N64、PS5… 全てもゲーム機を掃除した。 掃除して満足し、その日はそのまま寝た。 次の日、動画を編集中大きな壁にぶつかった。 音声解説をどうするか… トークソフトは喉から手が出るぐらいほしいが、お財布がひもじい今厳しい話だ。 無料音声合成ソフト… VOICEVOX… CoeFont… ゆっくり… 少し斬新さが足りなかった。 別に好きではないという話では無いが… 少し違っていた。 悩んだ末気分転換に音楽を聞くことにした。 久しぶりに開いたプレイリスト 昔聞いていた曲が流れてくる ユーロビートにハマっていたのでユーロビート系の曲が多かった。 ランダム再生で流していると、おちゃめ機能が流れてきた。 ビビｯ!!ときた。 UTAUを使おう!! どこからかやる気が湧き出てきた 夜通し編集し明け方 ついに最初の動画をYouTubeにアップした。 再生数はすぐには伸びないけど 達成感に満ち溢れた自分には十分だった。 EP.3 お台場 3連休真ん中の土曜日 珍しくバイトが休みでやることがなく暇を持て余していた。洗濯物も朝のうちに干しきり、掃除機もかけて 家事もやることがなかった。 だらだら転げながら暇している時ふと先輩が言っていたこと思い出した 「むしゃくしゃしてイライラした時とか暇でなにかを求めてる時はよくお台場に行くんだ!!」 都道50号 レインボーブリッジ渡りたいな〜と思いながらお台場向けて走った。 お台場へはビックサイトに行くときに来る以外特に来たことは無かった。 心地良い海風が吹く バイクを停めエレベーターに乗り東京ゲートブリッジを歩いた。 海風に吹かれると頭からいろんなものが飛んでいく。 時間を忘れさせてくれる。 … しばらく海風を堪能していたが、お腹は時間を忘れないようで「ぐぅぅぅ…」となった。 バイクで家に帰る途中空を見上げると埼玉の方は黒く雨雲が浮かんでいた。 洗濯物が!! 天気予報を見ておけばよかった。 急いで家へ帰ったが案の定洗濯物はビシャビシャだった… EP.4 カブ購入 これは少し前の話だ 初夏日差しが痛く肌を突き刺す。 僕は試験を合格し原付免許を手に入れた。 バイトで貯めたお金をATMからおろしてバイク店へ向かう。 店内にはたくさんのバイクが並んでいた。 色々なバイクが並んでいてどれを買おうか悩んだ。 色々見ながら店内を徘徊していると1台のトラックがやってきた。 トラックには青色の古い汚れたカブが積まれていた。 なんだろうと見ていると、店長が話しかけてきた。 店長によるとそのバイクは廃車になるそうで、引取ったばかりだと言う。 前のオーナーは何でも新車で買ってずっと乗っていたらしい。 外ではオーナーがバイクを見つめていた。 … 僕は財布を握りオーナーへ 「このバイクを買わせてください!!」と頼んだ。 オーナーは涙した。 そして「お金はいらないから大切に乗ってくれ」と言った。 僕はオーナーになった。 数日後きれいに整備され元汚かったカブはピカピカになり僕の元へやってきた。 早速キーを握りドライブへ出かけた。 行き先は前のオーナーの家だ。 EP.5 いざ修理!! スーパーへ買い出しに行く途中カブのエンジンが止まってしまった。 …ここ最近エンジンの調子が悪い… アクセルの反応が鈍い… エンジンオイルは交換したばかりなのに… お店に持っていくのもありだがここは自分で修理してみようと思う。 インターネットで調べてみると症状がアイドリング不調と似ていた。 原因はプラグ・プラグコードの劣化の可能性が高いと書かれていた。 早速おなじみのアマゾンでC50 カブ用のプラグコードとNGKのプラグを購入。 解説動画を見ながら交換。 しっかり動画撮影 戻し方がわからなくなったときの確認とYouTubeに投稿するために撮影。 工具は毎度おなじみアマゾンで。 動画を見ながらの作業 途中分解する場所を間違えたりネジがどこかへいったりする事故が起きたがなんとか交換することができた。 一通り組んで試しにエンジンを掛けてみた。 ブオォォォ!! まるで新車かのように息を吹き返した。 その音を聞いた瞬間僕は飛び跳ねて喜んだ。 EP.6 足立区からの刺客 同じ学校のバイク仲間の佐藤からドライブに誘われた。 佐藤は足立区に住んでいる。 佐藤の愛車はVespa50S。 そのキュートな見た目とは裏腹に結構ヤるバイクである。 佐藤がイジってるのあるとは思うが2ストのエンジン音はクセになる。 集合時刻東京タワー前 俺と佐藤は城々島を目指して出発した 国道1号を南下していった。 馬込のローソンに寄った時佐藤が提案をしてきた。 どっちが先に桜木町駅に付くかの勝負 僕はやる気になった!! ローソンを同時に飛び出し僕と佐藤は別々のルートで桜木町駅を目指した。 佐藤は細い一通の道を通って行った。 裏道から目指すのだろうか？ 僕は国道1号沿いを進んだ。 まるで自転車に乗った子どものように先を急いだ。 神奈川駅を過ぎたあと金港JCTを過ぎた時、向こうの橋にバイクが見えた。 Vespaだ!! 慌ててアクセルをひねった。 向こうはまだ気づいていないみたいだ。 赤信号ギリギリを通過し、国道16号を疾走した。 線路の向こういちょう通りを見ると一瞬Vespaが見えた。 桜木町2丁目を左折した桜木町駅前へ向かう。 向こうのカーブからVespaが現れた。 お互い全力疾走で桜木町駅前の停止線へ飛び込んだ。 勝負はわずかに向こうのほうが早かった… 国道16号、134号を南進 城々島へ付く頃にはあたりは暗くなっていた。 旅館へ泊まり美味しい料理と夜の城々島を堪能した。 EP.7 6.5畳から夢を見る ただの寝室だった6.5畳の部屋はバイクグッツとパソコン関係のモノで埋め尽くされた。 その部屋はいつしか子供の頃に描いていた理想の部屋へと変わっていった。 ずっとやってみたいと思っていたインターネット活動 大好きなバイクパーツや工具の山 あの頃「何でもできる」と思ったやる気はこの部屋から溢れ出ている。 子どもの頃夢見ていた理想へ向けてこの部屋から着々と足を進めていく… 6.5畳から夢を見る ©2025年 3月24日 Wii著 参考 C50 カブ 無料音声合成ソフト一覧 https://forest.watch.impress.co.jp/library/nav/genre/pic/music_voicesyn.html C50 カブ プラグ・プラグコード交換 https://www.youtube.com/watch?v=3ZzCup_jl0o
