今日は何日だっけ。 死んだあいつは今日も化け猫として顔を出してた。 とっとと成仏しろよとも思ったけど、そういえばあいつの飼い主は行方不明だったな そりゃ気がかりで成仏出来ないよな 俺もいっそのこと死んでみようとは思ったけどミキが心配だ。 そろそろ“クリスマス”が近いらしい。 今は12月か。 さすがに冷え込むけれど、シュガーの野郎は相変わらず寒そうな格好しやがる。 レディンも注意しろよとは思ったが、あいつは体中モフモフで寒さを感じようがないんだな 曇りの日だ。 千客万来は繁盛してるだろうか。 まあ、ぼちぼちやってるだろう。 ………あそこなら 俺のこの悩みもどうにか出来るか? 道端に猫が捨てられてた。 可哀想にな、通行人にも見捨てられてな だが、言うて俺もこの子と同じ。昨日すれ違った人の瞳の色なんて覚えてないだろう。 俺は それがどれだけ親しい人だったとしても起こる能力を持っている。 あいつらは… 俺が誰かを忘れているだろうな 一向にかまわない、この子は拾ってやらないと 人と話すことは出来る。 記憶されないだけ。 一応バイトはしてるし、一応人並みに生活はしているつもりだ。 でも全く記憶に残れないから給料が渡されないとかザラだ。 ちゃんとメモしてくれる店長で助かったな。 最近ミキと会ってない 覚えてくれてるかな そもそも、なぜか孤影悄然をすり抜けて俺を覚えていてくれるという事自体がイレギュラーだ。 なんらかの拍子に、ミキも能力の対象内に戻ってしまっているかもしれない。 怖い。 遭わないほうが幸せかもしれない。 拾った子猫に懐かれないのは悲しいな。 相手にとって見たら俺は永遠に初対面の真顔の人間なんだから、怯えられるのも不思議じゃない ああ、なぜ俺だけがこんな呪いに苦しめられなきゃいけないんだ? そういや、俺に恩なんて感じてるやつは1人もいないんだった どれだけ優しくしても、その優しさは帰ってこないんだな 誰かの記憶に残れない。 白錠家の4人は俺のことをミキ伝いに聞いているらしい。 その4人は、俺のことを覚えられるだろうか 正直言って、昨日まであんなに仲良く談笑していた相手に忘れられることほどの苦痛はないのだ。 そしてその相手が、俺に不思議なものを見るような目を向けるのがたまらなく苦しいんだ。 だから君には会えないな