『おーい!!来てやったぞー!!…………』 一人を残して廃れ切ったこの城に、そんな声が響き渡る。 『いねぇのかー!!…………』 それから何度も呼んだのだが…やはり返事は来ない。 …もしかして寝てる…?前もそう言う事あったけど…() なんだ…じゃあ寝室とか…? ~数十分後~ 居ない…マジでどこだよ… 足が棒になりそうなくらい探し回ったってのに居ない… 『…あ"。』 そう言えば一ヶ所だけ探してなかったな…多分そこだろ…てか、そこであってくれ… 『あ、いた。』 やっぱりそこにいた()床で倒れてるから…寝落ちしたのだろうか… 『おーい!…起きろジジイ~!』 『起きろってば~!!...』 …起きない、唸る様子も無い。 額は完全に冷え切ってて、脈も感じなかった。 『し…………』 なんだ、違う、偽物、これは偽物だ。 死んでない、ベガは死んでない、死んでない、違う。 …だって、ベガは、不死身だから、死なないから。だから違う、偽物、ベガは死なない。 『起きろ…起きろって…!』 起きてくれない。段々と嫌な汗が流れてきた。 …なんで、ベガは死なないはず、だって不死身なんだろ?…。 近くに。紙切れが落ちてた。 【ごめん、一人にさせる。】 雑な殴り書きの字で。書いてあった。 なんでだよ… …お前が一番、孤独の辛さを知ってるだろ。 不死身なのに…なぜ死んだんだ。 なにかあるはず… … ……………… 良く分からないまま、冷たいベガの隣で一夜は過ぎた
=一週間前の夜中= …先程、アールグレイが帰った頃。 『ゲホッ…』 …最近はどうも体が思うように動かない。 『………』 分かっていた、己は"不死身"であり"不死身では無い"と言う事には。 簡単に言ってしまうと、この能力は"借り物"なのだ。 借り物の力には、限界がある。 限界が来るまでは不死身…だが、限界が来た瞬間、その能力は発揮できなくなる。 分かっていた…はずなのにな。 アイツがまたこの城へ来る頃には…私はとっくに冷え切っているだろう。 正直な所、もう三日も持たないだろう。 …最後の週、か。 『…』 ~二日後の夜~ この城から見た景色は、どんな場所よりも美しく見える。 だから、ここが好きだ。 …せめてアールグレイに殺されてみたかったなぁ 『アイツと本気で戦ってみたかったが… それも叶わないだろうな』 そんな事を考えていると、急に心臓に刃物を刺された様な痛みが走った。 『…!』 そう言えば…手紙でも書いて置けば良かったか? …… 適当に近くの紙とペンを握りしめて、雑な字を書いた 【ごめん、一人にさせる。】 …今出来るやりたい事は終わってしまった。 今にも心臓がはち切れそうなほど、苦しくて痛い。 意識が、遠のいて来た。 あぁ、アイツに、会えて… ………