酷い衝撃音。 何か金属がぶつかり、こすれ、引きちぎれる音がする。 数分前に兄さんが突然恐怖の叫びを上げながら床に蹲って以来ずっと聞こえている。 わがはいはどうにか隣の部屋に移動したが… もしあの状態の兄さんに接触すれば、粉々に粉砕される程度ではすまないだろう。 相手が人間ならなおさらだ。 兄さんは優しい。 そして 残虐であっさりしている。 人間の争いに利用され、プログラムでできた心に酷い損傷を受けたままだ。 わがはいも戦争に巻き込まれた、よく知っている。 故に兄さんは人間を憎んでいる。等しく滅ぼすべき敵だとみなしている。 だが“ ”のように、心優しい人間だっている。 隣の部屋から音は聞こえなくなった。 代わりに啜り泣く声だけが聞こえてくる。 一瞬、声をかけに行こうか悩んだ。 しかし、腕も足も動かなかった。 充電切れらしい。