塔を創って。 塔に籠もって。 塔と生きてきました。 塔の中で、優れた完璧な技術のもとに 理想郷が完成するはずでした。 一人の創造者の種族が言いました。 「やはり我らの創った人工知能に我らを管理させるのは間違いだった」 一人の探求者の種族が言いました。 「鍵を見つけ、光を失い、もはや我らは探求することが無くなってしまった」 一人の吟遊民の種族が言いました。 「古典的美意識、形骸化した探究心に我らは囚われてしまった」 一人の守護者の種族が言いました。 「守る対象を失い、払いのける対象も失い、我らの存在意義は失われた」 一人の信教徒の種族が言いました。 「このままでは塔が死んでしまう。このままではみんな死んでしまうよ。」 つなげられ、取り払われ。 隔てられていた五つの階層は本来のようにつながり、その形を崩して新たな形へと変わっていく。 ……だが、遅すぎた。形を崩した塔はこぼれ、歪み、とうとう朽ちて倒壊する。