勢いだけで書きました。かなり長いです。 タイトル案募集中 【注意】 ・一応東方二次創作 ・現代/学パロ ・ほぼ霊夢しか出ん ・案外ホラー/ミステリーっぽい ・捏造、妄想しかない それでも良い方はどうぞ 夏はもう終わりだというのにも関わらず、セミが延々と鳴き続けている。 色々な音が混じりあって、まるで下手な合唱だ。統一感がとれていないみたいで、気味が悪い。都会じゃ、セミの声なんて全然聞こえなかったから気味が悪い。 「お盆は大変だったからね、せめて3日はゆっくりして行きん。今りんご剥くね」 そう言って、祖母はキッチンへと向かう。1人になった縁側では、未だセミがうるさく鳴き続けていた。 「はぁ……」 大きめのため息を吐いて、遠くに目をやってみる。見渡す限りの畑と田、遠くに小さく見える木造の家の数々。 よぼよぼと腰を曲げて歩いている数人の老人を見るに、ここは「限界集落」と言っても過言ではなさそうだった。 今日からここに2日間。電波も通じないし、話し相手もいないし。暇を潰す術がないので、だいぶ辛い日を過ごすことになりそうだ。 東京にいた方がよかったなあ、なんて思いながら、また大きめのため息をついた。 私の母方の祖母の家は、田舎にある。田舎中の田舎、ネットも繋がっていないような、小さな小さな村。 お盆は、災害とか用事とか、身内の不幸とか…色々あって、ここまで帰ってくることができなかった。私は帰ろうとは微塵も思ってなかったのに、親が勝手に行くと決めて、大切な三連休を消費していくことになったのだ。 暇だから嫌だといっても聞いてもらえず、渋々連れていかれることになった。本を読むのは好きじゃないし、そもそも私のやることなんて散歩と課題ぐらいしかないでしょうに。 帰ると、村の人たちが笑顔で迎えてくれた。全員で…15人ぐらい?全員かなり歳をとっていて、10年後くらいには廃村になってしまいそうなぐらいだった。 食料は殆ど自給自足って聞いたのが1番驚いた。こんな歳をとった人たちが、畑仕事なんてできるんだ。こういうのって、かなり力いると思ってたから。 「暇そうだね、霊夢」 「…母さん」 いつの間にか母が、私の隣に腰を下ろしていた。暇だと伝えると、母さんは苦く笑った。 「まあ確かに、この村じゃやることなんてないよね」 「ほんとにそう。はやく帰りたい、だって折角の三連休でしょ?」 一気に不満を吐き出すと、母から「まあまあ…」と宥められる。 「じゃあ母さんはどうなの?嫌じゃないの?」 と聞くと、母は少し考えるような素振りを見せて、私に顔を向けた。 「母さんはね〜…まあ暇だけど、こういうゆっくりなのも嫌じゃないよ。だってあっちでは、もっと時間に追われてるから…やることがないってのも、幸せだと思うの」 「…へえ、そっか」 確かに時間に追われないってのは、楽かもしれない。でも、それは時間にゆとりがあったことのある人だけしか感じられないんだ。物心ついた時から時間に追われてたんだから、今自由になったって、やることがないでしょう。 「…暇だったら、散歩でも行ったらどう?この村結構広いから、きっと楽しいと思うよ」 そうかな?と疑問を覚え、周りを見て気付いた。よくよく考えたら、目の前に広がる畑は全部村の一部なのだ。後ろにも畑や山はある。電車から降りて、そこからバスで村の入り口まで来て。そこから徒歩でおばあちゃん家にいったけど、20分近くかかったから、かなり広いのかもしれない。 「…分かった。いってみるよ」 「いってらっしゃい。母さんと父さんは畑の手伝いしてくるからね」 立ち上がって、家の庭を越えて、家の敷地外らしきところに出る。母親が手を振っているのが見えて、小さく手を振り返してみた。 「…にしても広いなぁ…」 滅茶苦茶広い。東にある山や、西にある大きな畑すらも村の一部だと知った時、急に世界が広がったように感じた。地面が黄土色のところが道で、ある限りは村の一部なんだと思うけど。やっぱり広いな… 「…えっと、まずどこ行こう」 そもそもどこにいくか決めてなかったし、村の中の道聞くの忘れてた……… そこらへんの人に話しかければ良いんだろうけど、やっぱりちょっと抵抗がある。でも迷ったら困るし…… …もう迷ってもいいから自由にぶらぶらしよう!! そう心に決めて、まずは山に向かってみることにした。そこまで高くないから山というより木の生えた丘だし、きちんと道がある。歩きやすそうだと感じ、黄土色の土を登り始めた。 セミの音と、私の足音。それ以外は何も聞こえない。静かだ。 そういえば人間って、完全な静寂に陥ったら狂うって聞いたことあったな。というか、普通に生きてて完全な静寂に至るなんてあるのかな…… 「…あれ、階段?」 道の続く先には、石でできた階段があった。その先には、赤い鳥居が。どうやら、神社みたいだ。 左端を歩いてみる。鉄の手すりは錆びていて、近くの岩や木には苔が生えている。どうやら、かなり昔に作られたものらしい。 階段の角度はかなり急で、しかも長かった。鳥居はちらっと見えているが、本殿は見えない。半分もいかないうちに息が切れてきて、立ち止まった。 「キツい……」 そもそも、神社って何でこんなに高いところにあるんだろうか。平地とかに作ればいいのに。参拝がこんなにキツいんだったら、人なんてだれも来ないでしょうに… 肩で息をしながら、やっと鳥居に辿り着いた。本殿は案外大きくて、藍鼠色の瓦屋根に木でできた壁、赤く塗色された柵で構成されていた。正面には、細い注連縄がかかっている。鳥居には、神社の名前が書かれていたらしいが、薄れていてよく見えない。とりあえず、この村にあって良いのかわからない程に立派なものだったのが分かった。 「えーっと、参拝方法は…」 ニ礼ニ拍手一礼、だっけ? 二回礼をして、大きな音で掌を打ち合わせる。そのまま数秒間目を瞑って合掌して、また礼をした。これで参拝は大丈夫…な筈。 「…ん?あれ…」 視界の端で青々しい葉が目に入って、思わずそっちを見た。 そして、桜だ、と確信した。 勿論、花が咲いていたわけでもないから、一般人がそうやって決めつけることはできないはずだ。でも、その木にはそれが桜であると思わせるような何かがあった。 綺麗だと感じたので、写真を撮ってみる。光が差してキラキラと輝く葉は、とても美しかった。 「…」 突然後ろから呻き声が聞こえて、勢いよく振り返る。半透明の姿の少女がそこに居て、ぶつぶつと何かを呟いているようだった。 「…ぅして……」 恐怖を覚えたが、ゆっくりと近づいてみる。少女は黒髪ロングで、黄ばんだ白いワンピースを着ていた。明らかに、幽霊みたいだ。 「…どうして」 その瞬間、少女に強い光が当たった。私の背後から発せられているようで、思わず振り向いて目を見開いた。 「桜が、」 ピンク色の花を散らして、輝いている。 桜が光を受けているんじゃない。桜自体が光源になって輝いていた。満開になって、ピンク色を辺りに振りまきながら。 「…どういう、こと…?」 私は思わず、少女に詰め寄った。逃げようとしているように見えたので腕を掴むと、私の手は腕を掴むことなく、少女に触れることはできなかった。 「…あなた、幽霊なの…?」 「…さあ」 少女は首を傾げる。つやつやの黒髪が光を反射して、眩しかった。長い前髪が払われて顔が見えたが、やはり少女らしい顔立ちで、可愛らしかった。 「これは何?なんで桜が……」 「知らない。私のせいじゃない」 そういうのは犯人が言うもんなんだよ、と呟いて少女を睨みつける。少女は陰気も陽気もないような、無の表情を浮かべて私を見つめている。 しばらくお互いに無の時間が続いたが、遂に少女が口を開いた。 「でも…あなたも、きっと」 その瞬間、桜から発せられる光がいっそう強くなった。私の視界は一瞬のうちに純白に染まり、私はそれに呑まれるように意識を落とした。 「…ほら霊夢、おばあちゃんに挨拶」 「…え?」 恐る恐る目を開けると、そこは祖母の家の庭だった。私と父と母は村の入り口に立っていて、それを祖母が見守っていた。 …私、さっきまであの神社にいた、のに… 「…霊夢、まだ帰りたくないかや?それだったら、うちにおりんよ。村の人たちも大歓迎だからね」 「…ううん、ごめん。えっと…ありがとう?」 とりあえず、村に残されるような雰囲気がしていたので、祖母の誘いを断る。頭も体も痛いまま村の人たちに手を振って、バスの停留所までたどり着いた。 試しにスマホを見てみる。私がこの村に来た日の翌日、帰る予定の日付が映されていた。 「…どういうこと…?」 そういえば、さっきから光がまぶしいと思えば夕方だ。日が沈みかけていて、影が長く伸びていた。 「時間が飛んだ、ってこと?」 ありえない。私が記憶とか意識とかを失っていただとかじゃない限りは。いや、意識を失っていたとしても、まさかあの状況になることはないだろう。母さんも父さんも、一応私のこと大切に見てくれているし。そんな鬼じゃない。 「ねえ母さん、私って昨日何してた?」 そう聞くと、母は少し驚いて、ふっと笑って話し出してくれた。 「霊夢はね、昨日は一緒に畑仕事を手伝ってくれたよ。お昼にスイカを食べて、それから霊夢は山の神社に行ったかな。にしても、なんでこんなこと…」 「…分かった。大丈夫。変なこと聞いてごめんね」 やっぱり、昨日私がいなかったとか、そういうわけじゃなさそうだ。母さんに昨日の記憶があるってことは、昨日が飛ばされたって訳でもない。 …じゃあ、どういうこと?私の意識だけタイムリープしたってこと?? 考えすぎて頭が痛くなっているところにバスが停まったので、そこに入る。席に座ってしばらくすると、私はいつのまにか寝てしまっていた。 「…悲惨」 真っ白な空間。その中央に立つ、あの少女。一瞬で、ここが夢だと分かった。 「あなた、何者なの?しかも、なんで私の夢に…」 「私は何もしてない。何者でもない。これは、あなたが私の空間に入ってきただけ」 「あなたの、空間…?」 何もない、真っ白な空間。地平線も空も、色は変わらない。私たちの足元にも影は落ちていない。気が狂ってしまいそうな白さだ。 「私がいつも留置している空間にあなたが来ただけ。桜の件も今も、私は何もしていない」 少女は両手を小さく上げて、違うとでも言いたげに首を振った。何度も否定されていることや、少女の言っていることが気になって警戒心を少しだけ解く。 「強いて言えば…いいえ、何もないわ」 「…やっぱり、何か知っているんでしょ!!」 そう言って、少女の腕を掴む。今回はきちんと掴めて、彼女も驚いていた。 「知っているけど、あなたは知るべきではない。知ったら…」 その瞬間、目の前の少女すらも白に染め上げられた。 光だ。あの時みたいな強い光が、私と少女に当たっている。 私の右側に、光る大きな桜の木が凛と佇んでいる。また私は白に染め上げられ、桜に意識を吸われるような、そんな感覚に落ちいった。 「!!」 目を覚ます。外はもう真っ暗だ。バスは丁度止まって、母さんと父さんが降りる準備をしていた。母は、私を見て「あ、起きた?」と言いながら荷物を持ち上げていた。 「霊夢、寝てたからさ。もうそろそろ起こさなきゃって思ってたけど、自分で起きたんだね。ナイスタイミング〜」 …そんなに長い時間、寝てたかな? 停留所から駅まで、2時間ぐらいだと思う。だけど、あの夢らしきものは10分だけしか無かったような気がする。 あれが本当に夢だったなら、まだ納得できたかもしれない。でも違う。腕を掴んだ時の感触、光の眩しさ、そして薄れない記憶。全てが「あの夢は夢じゃない」と訴えかけていた。 あの時みたいに時間が飛んだんじゃないか、なんて考えていたら両親はもう座席から立ち上がっていて。置いていかれそうだったので、私は慌てて2人を追いかけた。
音楽:x0o0x_ 様 きさらぎ駅/猿夢/ひとりかくれんぼ です 【あとがき】 scratchさんに「記述が長すぎます」って怒られたんでここで切りました。まだ冒頭です。憑神ちゃんびっくり 霊夢の陥った不思議な出来事、そしてそれの転末。見守っていってくれると嬉しいです!!