前章↓ https://scratch.mit.edu/studios/29586791/ バァン!! 銃声と共に、ロットの眼前に現れたのは弾丸のようなもの。 「!!」 ロットがそれを避けると、刹那、背後で爆発音が鳴り響く。 続けて7Kは片腕を空へ向けて伸ばし、矢のようなものをいくつも作ってロットをめがけて攻撃する。 ロットはそれを避けては撃ち落としていく。 パチンと指の音がなると、今度は小さな球が何百という数でロットを追いかける。 続けて針の雨が、光線がと、絶え間なく攻撃が続く。 ロットは深呼吸をする――そして思い出す。"彼"がしていたことを。近くとも掴むことができなかった"あの子"のことを。 直後、ロットの背後に羽根が円を作るようにして現れる。それは7Kに向かって飛んで行く。 「へぇ、驚いた。ここまで再現されているのを見たのは2回目だ」 7Kは羽根を撃ち落としながら言う。 「そういえばその時もこんな風に・・・」 7Kはぽつりと呟く。 その後、自身の手に息を吹きかけ、霧のようなものを作り出す。そしてそれを、空に向けて投げる。 すると、霧が雲となって雨を降らし出す。 (アメフラシ・・・?似ている攻撃だが・・・なんだろう・・・) ロットは思った。何の根拠もないが、直感が告げていた。 (当たったら終わり―――) ロットは羽根を掴んで、降ってくる雨を羽根で弾き返す。 だが全ての雨を弾き返すことは出来ず、いくつかの雨の粒が服に付着した。 「!!」 すると、付着した部分が液体となって溶け落ちていく。 「弾き返すという考えはいいが・・・残念だな、この雨は降り続ける...ずっとそれを続けるつもりなのか?」 「・・・・・・」 7Kはそう言って攻撃を続けていく。 ロットは焦りを顔に滲ませながら攻撃を避け続ける。 「・・・あのバカ...キレて正面から攻撃したな...7Kと話すときは冷静でいろとあれ程...」 「まぁ、準備は間に合ったしいいんじゃない?結果オーライって事で」 その頃、"リーダー"と看護師のようなイカが、大きなモニターの前でそんなことを言い合っていた。 「でもまさか・・・ロットさんがあの子だったなんて」 「もしかして、とは思っていたけどな」 二人の間に沈黙が流れる。 「・・・本当にそうだと思うか?」 「さぁ、分からないけど。"不老"じゃないからね」 看護師のようなイカが、モニターに向かって何か操作をしながらそう言う。 「あの子の体はとても速い速度で変化していたし・・・別にできないことはないと思うけど」 「まぁ普通だったらあり得ないな」 会話の後、奇妙な音が鳴り響いた。何かを確定したようなその音が鳴り止むと、モニターにある画像が映し出された。 「準備はできたよ」 看護師のようなイカが、決意を感じさせる声で言う。 「なら、反撃開始だな」 (まずい・・・このままじゃこっちの体力だけ削がれていく・・・避けるだけじゃだめだ・・・・・・こちらから攻撃をしかけないと...だが......) ロットがそう考えている間にも、攻撃は絶え間なくロットを追いかけてくる。 (・・・だめだ。隙が全くない...それにこの威圧感......空気が重い...!!体中に鉛をぶら下げられているように感じる......) ロットの頬を擦るようにして攻撃が通り過ぎる。 (加えて、あの人は何が弱点なのか・・・何なら攻撃が有効なのか、全く分かっていない......!!"あの子"が使っていたであろうこの"羽根"も、実際にあの人に当たったところを見たわけではないから、当たったとしてもはたしてダメージを与えられるのかどうか全く分からない...!!) 降り注ぐ雨を弾く。 (何か有効な攻撃は―――) その時、パリパリパリ・・・という音が鳴り、7Kの周りにノイズがいくつも出現しては消えていった。 「!!・・・・・・何だ...?」 7Kは驚いてそう口に出した――次の瞬間、膝から崩れ落ちるようにしてバランスを崩す。 「これは・・・・・・電波か?どこから...」 「電波・・・??」 ロットが7Kの方を警戒しながらも、突如の出来事に動揺していると、地上の方からシャルの声が響き渡った。 「よくやったわ・・・・・・!!間に合った......!!7K、もうこれ以上あなたの思うとおりにはさせない...!!」 「う"っ・・・」 シャルの声が聞こえた刹那、7Kが倒れ込み、地面に手をつく。 (・・・!!何が起こったのかは分からないが、反撃できるチャンス――――) ロットは急いで体勢を変え、7Kに向かって斬り込む。 7Kはロットの攻撃を避けていく―――が、明らかに先程よりも動きが鈍い。 ロットの攻撃が、7Kのすぐそばを掠めていく。 (!! 行ける・・・!) ロットは羽根を強く握り、大きく振り上げた。 その攻撃が、7Kに当たろうとしたとき。 目を、体を貫くような強い閃光が走り、辺り一面がモノクロに染まった。 体中を焼き尽くすような強い熱が伝わったかと思うと、今度は肌を溶かしてしまいそうな熱気が駆けていく。 そして最後に、頭の中で雷が走ったかのような轟音が鳴り・・・ 気がつくと、辺りが煙で包まれていた。 「!!」 ハチは辺りを見渡した。手には、握っていたエイトの手の熱が確かにあったが、煙によって、すぐ近くの景色を見ることすらできない。 「カサネ!!シャル!!ミントさん!!みんなーーーっ!!」 ハチは必死に名前を呼んでいく。煙を吸わないようにしながらも、必死に、声が届くように。 だが、返事は一向に返ってこない。 それでも名前を呼び続け、返事を待っていると、少しずつ煙が晴れてきた。 「っ・・・げほげほっ...!!!」 「エイトくん!?」 するとその時、エイトの目が覚めた。 「大丈夫!?痛いところとかない!?」 「はあっ・・・げほっ...」 エイトの目が開き、しっかりとハチの瞳を捉える。 エイトが口を開く。 「...ユイ?」 「えっ・・・?」 強く握りしめていた手が、一瞬緩んだ。 「今、何て―――」 ハチが問いかけようとした瞬間、強い風が吹き、辺りの煙が一気に消えていった。 視界の先に、人影が見える。金色のラインが入った黒い靴。ロットが履いている靴だ。 「ろ、ロット・・・」 ハチが名前を呼ぼうとしたその時。その影に、"何か"があることに気づく。 「さ・・・・・ん」 その違和感が何なのか理解できないまま、ロットの姿を捉えた――― 羽根が体を貫いていた。 左肩―――ロットの目は深く閉ざされている。 「...残念」 恐怖と嫌悪が体中に伝わる。 「もうちょっとこの世界を楽しみたかったけど・・・もう行かないといけないらしい」 それはゆっくりとこちらを向き・・・そして笑った。 【第二十七話終わり 第二十八話に続く】