ScratchData LogoScratchData
Back to Snowdrop2021's profile

小説「猫と違和感、人探しと後悔 下」

SNSnowdrop2021•Created June 5, 2024
小説「猫と違和感、人探しと後悔 下」
3
3
48 views
View on Scratch

Instructions

どうもSnowdrop2021です。待望のガチシリアスです。 楽しいですね書くの!!!!!(( ただ最初の調査パートがマジ駄文です やっぱり動きのないシーンの表現って難しいんですかね… 注意書きは毎度長すぎるので割愛、あえて言うなら、 ・流血表現 ・妄想及び捏造(能力解釈を割と勝手にやってる) ・キャラ崩壊あるかも ・割と閲覧注意かもしれないくらいには話がそれなりに重い が苦手な方はお帰りください。 捏造に関しては本当にすみませんでした。 「下 人探しと後悔」 「…まあこれだけありゃ十分だよな」 ゴーストタウン…と形容すべきような廃墟群のうちの一つの屋内に、どさりと置かれた書類の束がある。 ここ最近ずっと感じている「違和感」。 そのせいかどうも体が重い上、折角の取り柄の記憶力も衰えているような気がする。 少し前だって、… …何だったっけ…? 「はぁー…」 ともかく、早くこの違和感を突き止めなくてはならない。 早く何とかしなくてはならない。 書類を一枚とり、斜め読みしていく。 重要な部分は気に留め、そこまでの重要さがない内容は読み流していく。 そうやって書類を何枚も読んでいくうちにも、いくつも読めなくなっている箇所がある。 大体三分の一くらいの書類に目を通したところで気づく。 …読めなくなっている箇所は、文脈からしてほぼ全て名詞なんだろうと。  ◇ ◇ ◇ 次の書類を手にとる。 その書類は、その人物が13年前に起こしたという事件について書かれたものだった。 ふと一つの行を見る。その行に、間隔からして大体四文字くらいの単語が読めなくなっている箇所がある。 それよりも前の行を読む。 『この事件では犯人の◼︎◼︎◼︎◼︎・◼︎◼︎◼︎◼︎以外の全員が犯人により殺害されており』… 『そのためについた“◼︎◼︎◼︎◼︎”という呼び名は世間的にも定着しており、恐れられている』 …そういえば、さっき読んだ別の資料では、事件現場は貴族の集会?だったとあったはずだ。 もしかしてこの部分は… 「“貴族殺し”…?」 …どことなく聞き覚えのある言葉に感じる。 すると、今まで読めなかった「大体四文字くらいの単語がありそうなスペース」がじわじわと文字に変わっていく。 読めるようになったその文字は、先ほど立てた予想と完全一致だった。  ◇ ◇ ◇ それから、同じような作業を繰り返すと、幾つもの単語が戻っていった。 『仕込み杖』『シルクハット』『オッドアイ』などと、どの単語も同じ一人の人物を指しているということは文脈からも把握できる。 ただ…そこから先、まるで記憶に靄がかかったようにハッキリしない。 前の事件現場から続いている違和感、そして同一人物による事件だとはとっくのとうに分かっている。 ふと資料を何枚か眺める。もう資料の読めない字は、おそらくその人物の名前だけになっていた。 …いや、それ以前におかしい。 「読めない字」はまず世界のバグだと思っていた。だから正直読めるようになるとは思っていなかった。 なのに、自分がその言葉を理解した瞬間に元に戻っていく。 本当にバグなら、こんな奇妙なことにはならない。 つまり、何者か…恐らく例の人物による、何かしらの能力か何かによるものなんだろう。 だとしても疑問は多数残る。 例えば仮に記憶を消すものだとしたら、これでも再生能力がある自分に、ここまで疲労があることとして説明が付けづらい。 能力が「能力者が解除するまで続く」という「維持」が含まれるものなら、説明ができなくはない。 でも、「記憶を消す」という能力は、「維持」の意味合いがないものが多い。 目を伏せ考えを巡らす。 記憶を消すことに近い効果を持ちうるような、そして維持が必要であろう能力、 そして、その効果を表すような言葉… 「“催眠”…か…?」 突如鋭い耳鳴りがした。 ただ、その中に言葉が混じっている。 『“催眠”…… ◼︎◼︎◼︎◼︎・◼︎◼︎◼︎◼︎という人物のことを全て忘れる、また視認できない』 あまりに耳障りな、ノイズのような音のせいで聞き取りづらいが、言葉だけは理解できた。 (…そうか) …自分はあの時、この人物によって催眠を掛けられていた、ということだ。 ならこれを解除してしまえば、忘れてはいけなかったことを思い出せるはず。 便利なことに、自分には能力だろうがなんだろうが解除できる能力がある。 解除対象は“催眠”。 右手を顔の位置まであげ、自分の右頬を指でありったけの力で弾いた。 バチッ、と音が響く。 立ち上る土煙、瓦礫の山、真っ赤に染まった周囲、立ち込める血の匂い、その中に立ち尽くす友人の名は… 「…ディール…?!」 強く弾いた頬が未だビリビリと痛い。 …そうだ、あの時自分は何もできなかった。 その痛みが、「これが真実だ」と告げているようだった。 無造作に積み重なった書類の束を掴んで空に投げる。 内容は全て覚えたからもうこれは必要がない。 書類一枚一枚がバラバラになってそのまま消滅した。 『早く行かないと』 そんな思考だけで廃墟を飛び出した。 半分曇天の空で、ちょうど日が暮れていた。  ◇ ◇ ◇ 「…何やってんだろ」 焦りだけで飛び出したところで、行く宛てはない。 …冷静になれ。 そもそも、催眠にすぐ対処できなかった、その後あれだけ気が付かなかった、それらも自分が冷静さを欠いていたせいだ。 何となく立ち寄ったここは建物の屋上。下には、ディールと一番最初に会った、あの路地裏がある。 ふと空を眺める。 本来真っ暗な空には雲がかかり、あの時のように月はおろか、薄明かりすらない。 …ふと何者かの気配に気付き、眼下の路地裏に目線を向ける。 そこにいた“誰かは”、月の光などなくともハッキリと判別できた。 紛れもなく、彼は 「ディール・オリバー」だった。 …思わぬ邂逅になってしまった。 伝えるべき言葉だなんて用意できていない。 だが、気付かれる前に声を掛けないと、と焦りを感じ、少しだけ離れたディールの背中側の地面にテレポートする。 振り返られる前に呼びかける。 「ディ、ディール…」 明らかに震えている声。 自分が、情けなくて仕方がない。 そんな考えを知るはずもなく、目の前の彼は振り返る。 「…何で、お前がここに…?」 「…」 あまりにも暗く光のない瞳、薄らと怪訝そうな声に対し、その感情のあまり反映されていない不自然な表情… そして以前より確実に増した、他人を寄せ付けない圧迫感に、思わず声を失ってしまった。 「…どうして…俺が分かるんだ…?」 その声ではっと我に返る。 慌てて言葉を繋ぎ合わせる。 「方法なんて後でいいだろ…」 …返答になっていない。 それからほんの少し間が空いた。 「お前は苦しませねえ、前にそう言ったろ…」 「…これも二度目だが…苦しむのは俺だけだ」 その言葉で、先ほど感じた恐怖に近い感情が一気に消えた。 「…は?」 一歩前に踏み込む。利き手でディールの首元の襟を掴む。そのほんの一瞬、彼の目が揺らいだ。 「…何言ってんだよ…そんな自分だけが苦しんでりゃいいとか…!」 …自分が不器用なのはよく分かっている。 伝わらないだろうとも思っている。 言えるのはどうせ薄っぺらな言葉だけだ。 それでも… 「お前を好いてた奴らは全員、絶対にお前が苦しむことなんざ望んでるわけがないだろうが!お前ならそれくらいわかってるだろ!!!」 そんな最中にも、彼は顔色一つ変えない。少しの抵抗すらしない。 「それに…“友人”が苦しんでて何もせずいられるわけがあるかよ…!」 その言葉が終わった後、軽く目を伏せ、やっと彼は口を開く。 「…“友人”か…」 「…確かにその通りさ…だがな、逆にだからこそだ」 彼の緋く暗い目が自分を映す。 「現に、お前だって苦しんでるだろ…?」 頭の中で、その言葉が広く反響しているような感覚がした。 襟を掴む力が無意識に抜ける。 「…お前が苦しむ必要なんてどこにもないんだ」 腕を軽く振り払われる。 重力に従ってずり落ちた腕がぐらんと揺れた。 「…それに、もし俺を殺したいなら好きにすればいい」 何も言えない。 何を言えば良いのかが分からない。 「違う…」 やっと発せた言葉も、薄っぺらで届くわけのないもので、 その友人の背中は、随分遠くになってしまっていた。 『…それに、もし俺を殺したいなら好きにすればいい』 恐ろしさを感じるほど落ち着いた声で、その言葉に迷いは感じられなかった。 あのまま、どこか絶対に取り返しのつかない、絶対に戻ることのできない場所へ行ってしまうのではないか… よからぬ考えが頭をよぎる。 それでも、友人を追おうとはできなかった。 結局、ディールの姿が見えなくなるまで、その場から動くことすらできなかった。  ◇ ◇ ◇ 「おや、あの時の」 声の方を向くとそこには、最初にディールを殺すよう依頼された依頼人がいた。 一瞬殺したはずだと思うも、ここは本世界戦ではない。生きていると見てもなんら不思議ではない。 (…なんでこんな最悪のタイミングで…) 自分の不運さを呪うも、そんなことを考えたってどうにもならない。 「いや〜まさかここで会うとは。ちょうど貴方に感謝を伝えたかったんですよ」 「…感謝?」 …身の毛がよだつような、嫌な予感がする。 「逃げられた、っておっしゃられていましたが…あの時多少の情報は貰えましたし」 聞いてはいけない。聞くべきじゃない。 それでも、その場から動けなかった。 「…はぁ?いくらでも出すと言ったのに…」 「んな昔から追われて、未だに見つからんような奴をそんな簡単に殺せるわけがないだろ…」 「まあ多少の情報くらいなら渡せる。これがその場所、あと指名手配書とズレてた情報。何なら代は要らんからこれで…」 あの時の会話を思い出す。 あの時は、依頼人が激昂して話が通じなくなったから…と殺したし、別に情報は広まっていないはずだ。 分岐した世界線で、本世界線とのズレが生むことはよくある話ではある。 それは分かっている。 …この依頼人が生きているということは、つまりこの情報を持っていた、ということだ。 あの時は、別にこれくらいなら何ともならないだろう、面倒事はしたくない、と思っていたからとった行動だった。 感謝というものが何なのか。 もう理解してしまった。 それでも残酷な事実は耳に突き刺さってくる。 「あの情報を別に回したんです。そこから確か探偵…?ですかね。そこに回ったそうなんですが…まあ間接的ではありますが」 「貴方のおかげで、あの“貴族殺し”をあと一歩まで追い詰めることができたそうなんですよ!」 「正直裏社会の人間である私らからも、あいつはそれなりに脅威でしたからね。本当にありがたい」 「…」 「まあ残念なことに、確保には至らなかったそうですが…今後も贔屓にしたいのですが、そういえばお名前は?」 スカーフのボロボロな端が、風で宙に揺れる。 そこで思いつく。 …本世界線ではもう既に死んでいる奴だ。 「…東雲黒宙…」 「へえ!今後ともどうか」 「…さて」 言葉を遮る。 こんな奴にかける時間が勿体無い。 「これでアンタを殺す口実はできた…俺の情報を知ったなら当然口封じだ」 「…え」 コートから取り出したナイフを、前に踏み込むと同時に振り上げる。 真横に移動しても、元依頼人はさっきの方向を見つめたまま、未だ状況を処理できていない。 ナイフを振り下げる。 「ぐっ…ぁ…?!」 返り血を避け、断末魔から耳をそらすように、元依頼人の背後から少し先の地面に着地する。 どさり、と倒れ込む音と同時に振り返る。 ナイフに着いた血を振り払って、一歩歩み寄る…が、もう確認する必要は無かった。 もうその依頼人は息絶えていた。 「…」 手で軽くそれに触れると、すぐにバラバラになって消滅した。 地にはまだ血の痕と匂いが残っているが、それもじきに消えるだろう。 メモクレに続く

Description

こっちに続きがあります 正直これが本番と言っても過言では…あるかもしれないですn((((((( 宛てもなく歩きだす。 足音はしない。 特に理由がなくとも、ずっと昔から身についている癖だ。 曇天だった空から雨が降り出した。 ふと横に目をやると、一匹の猫がいた。 白い毛並みに青い目の、あの依頼の猫だった。 …世界線が違うなら意味はない。 じっとこちらを見つめてくる猫の視線が、まるで自分を責めているように感じた。 また歩きだす。 『いいよ…苦しむのは俺だけだ…お前は苦しませねえ』 何度も頭の中で言葉が反芻される。 そのたびに、自分の無力さを痛みと錯覚するほどに、突き刺さるように感じる。 『現に、お前だって苦しんでるだろ…?』 言われてみれば本当にその通りだった。 確かにこれは苦しみ以外の何なんだろう。 自責の念以外の何と表せばいいんだろうか。 隠すつもりだった。 こんな形の弱さなんて見せたくなかった。 『貴方のおかげで、あの“貴族殺し”をあと一歩まで追い詰めることができたそうなんですよ!』 結局自分があの事件の発端だった。 自分が大切な友人であるはずの、ディールを苦しめた。 自分が友人の大事な人たちを殺した。 今だったら、あの言葉に返すことができる。 「…苦しむべきは、お前じゃなくて俺だろ…」 いつの間にか強くなった雨が頬を突いて流れていく。 自分への怒りも失望も、自分の中で渦巻いて出口はない。 バキッ、と硬いものが折れた音で我に返る。 右手に握ったままだったナイフの柄が、真ん中で真っ二つに折れていた。 「…」 後ろに向かって放り投げる。 それは地面に落ちる音がする前に崩れ消えた。 辺りには、激しさを増していく雨の音だけが響いていた。 〜Fin〜 【出演者(サムネ使用・キャラは敬称略)】 ディール・オリバー @samewaniudon 様 東雲黒宙 @Snowdrop2021

Project Details

Project ID1032640333
CreatedJune 5, 2024
Last ModifiedJuly 2, 2024
SharedJuly 2, 2024
Visibilityvisible
CommentsAllowed