「ごめんなざっ…!!」 そんな子供の声が聞こえた気がして、私は路地裏へ足を運んでいた。 私はカル=キシカ。国の追手から逃げながら、用心棒という職を持ちながらの流れ者だ。 (結局雑魚だな…) そう呆れながらも、ずかずかと男の方へ足を踏み入れて行った。 「…あぁ?!」 こちらに気付いたようだ。だが容赦無く私は剣を抜く。男は怯え切って逃げようとした。…私の正体に気付いたのだ。 自慢の脚力でジャンプを醸し、男の背中を浅く切る。 リーン… 耳にかけた鈴の音が鳴る。同時に男が前に倒れた。 コロコロ… まだ鈴の音はかすかに鳴っていた。 さっきまで激しく暴行を振るわれていた子供の方を向く。擦り傷が顔中にあり、きっと腹を殴られでもしたのだろう。口から血を流していた。 「…死んじゃいねぇよ、気絶してるだけだ」 小学生ほどだろう。その少年の視線に、返事をした。 カタカタと震え、何かを話そうとも口をあぐあぐしている。 数分後、出た言葉がこれだった 「キシカさん?世界中を旅して回ってるさ、あのっ!あのキシカさんだよね?!」 こんな子供にまで自分の名が広まっているのか。このままだとなかなか身を隠すのは難しい。やれ、どこで誰が漏らしたんだか…。 「助けてくれてありがとう!会えて嬉しいなぁ!キシカさんはね、学校の、みんなの憧れなんだよ!」 そんなのことお構いなしに話を続けるその顔は、とても輝いて見えた。 ふと、さっきまでの笑みが消える。 「でもね、僕、お父さんに捨てられちゃったんだ。お母さんは昔不倫したまま逃げちゃったんだって。」 なんて子だろうか。 「それで、今日歩いてたらその男の人の足につまいずいちゃって、それで…」 「学校でもね、いじめられてるんだ」 …何か手繰れるものがあれば…。 「明日、何か学校で無いのか?」 そう聞くや否や、 「授業参観」 とぼそっと呟かれた。 (……よし) 「決めた。明日お前の授業参観行ってやる」 思いっきりこちらを振り向かれる。 「い、良いの?!」 私なりの笑みを浮かべながら、少年のクシャクシャな髪を撫でてやった。 グシャグシャの、絡まりに絡まった髪を撫でられた。
(謎) そして第二話() https://scratch.mit.edu/projects/1014263011